2025516

事業計画書の作り方

飲食店開業を成功させるための事業計画書作成ノウハウを解説。融資に通る収支計画の立て方から市場調査のポイントまで、開業準備に必要な全知識を網羅した実践ガイドです。

事業計画書の作り方の画像

飲食店開業成功への鍵:事業計画書の作り方完全ガイド

飲食店を開業するという夢を持っていますか?美味しい料理とこだわりの空間で、お客様に喜んでもらいたいという情熱は素晴らしいものです。しかし、「情熱と素晴らしい料理さえあれば成功する」という考えは、飲食店開業における最も危険な思い込みかもしれません。

実は、飲食店を含む起業の成功確率を高めるために不可欠なツールがあります。それが「事業計画書」です。事業計画書を作成する目的は大きく分けて2つあり、「自分が見るため」と「他人に見せるため」の視点を持つことが重要です。

この記事では、飲食店の事業計画書作成から成功までの道のりを徹底解説します。融資獲得のコツから収支計画の立て方、さらには失敗しないための市場調査のポイントまで、あなたの飲食店開業を成功に導くための実践的な情報をお届けします。

飲食店の事業計画書とは?その重要性と基本構成

なぜ事業計画書が飲食店開業に不可欠なのか

金融機関から融資を受ける場合、事業計画書の内容を実行して、利息を含め、きちんと貸したお金が返済できることが重要なポイントになります。具体的には、事業計画書の損益計画や資金計画が希望的観測ではなく、実現性の高い数字になっていることが求められます。そのためには、売上や費用に対する根拠をしっかりと積み上げることが大切です。

また、事業計画書は単なる融資のための書類ではありません。飲食店経営の羅針盤として、開業後も定期的に見直し、軌道修正するための重要なツールとなります。

事業計画書が果たす3つの重要な役割

  1. 経営の方向性を明確化する:コンセプトや目標、戦略を明文化することで、迷いなく進むことができます
  2. 融資・資金調達の必須ツール:銀行や投資家を説得するための最重要資料となります
  3. リスク管理と問題点の早期発見:計画段階で課題を洗い出し、対策を考えることができます

事業計画書に含めるべき基本セクション

飲食店の事業計画書には、以下の基本セクションを含めましょう:

成功する飲食店の事業計画書:市場分析と事業コンセプト

ターゲット市場の明確な定義方法

集客販促を始める際に、一番初めに行うことはターゲット顧客の設定です。どんなお客さんをお店に呼びたいのかを明確にすることで、自然と集客販促の方法が決まっていきます。「地理的」「人的」「心理的」など3つの面からターゲット顧客を具体化していくと明確にしやすいでしょう。

例えば、「近隣のオフィスで働く30代のビジネスパーソンで、健康志向が強く、ランチに栄養バランスの良い食事を求めている人」というように、具体的に設定します。

競合分析の実施手順とポイント

出店地と物件が決定したら、商圏内のニーズを想定したり競合店の調査をしたりするなど客観的な視点から判断し、最初に考えたコンセプトがビジネスとして成り立つかどうかを再度検討することが重要です。

競合分析の際のポイント:

差別化できる事業コンセプトの構築法

独自性のある事業コンセプトを構築するためには:

  1. 顧客の未充足ニーズを発見する
  2. 自分の強み・専門性を活かせる領域を見つける
  3. 競合店にはない価値提供の方法を考える
  4. コンセプトを一文で表現できるよう洗練させる

差別化の例:「有機野菜100%使用の体に優しいイタリアン」「地元食材にこだわった季節限定メニューのある居酒屋」など

飲食店の収支計画:現実的な数字で成功への道筋を描く

初期投資と開業資金の見積もり方

飲食店開業にあたり、どのくらいの開業費用が必要になるか、事前に詳細に検討することが重要です。できる限り詳細な科目設定を行い、検討してください。できるだけ初期投資は抑えた計画にしましょう!

主な初期投資項目:

月次収支予測の立て方と利益計算

損益計画表を作成する意義は、借入金返済に充てることができる予測利益を算出することにあります。予測利益は、売上高予測から予想される費用を引いて求められるので、まず売上高予測を予想客単価、予想客数をもとに算出することから始めましょう。

現実的な収支予測を立てるためのステップ:

  1. 売上予測の算出

    • 客席数 × 回転率 × 営業日数 × 客単価 = 売上予測
    • 例:30席 × 2回転/日 × 26日 × 2,000円 = 312万円/月
  2. 費用の算出

    • 原価率:飲食店の業態によって異なるが、一般的に30〜35%
    • 人件費:売上の25〜30%が目安
    • 家賃:売上の8〜10%が理想的
    • 水道光熱費:売上の3〜5%
    • 広告宣伝費:オープン時は多め、その後売上の2〜3%
    • その他経費:消耗品、リネン、清掃費など
  3. 利益の計算 損益計画では、売上高から税引後利益までを計画していくことになりますが、その構成は、大きくは収益と費用、その差額である利益で構成されています。

    • 売上総利益(粗利益)= 売上高 - 原価
    • 営業利益 = 売上総利益 - 販売管理費(人件費、家賃、水道光熱費など)
    • 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用(借入金利息など)
    • 税引前利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
    • 税引後利益 = 税引前利益 - 法人税等

資金繰り表の作成と運転資金の確保

月次単位におけるお金の必要可否を検討する資金繰り表は、毎月きちんと整理しておかないと作成できません。ある意味、もっとも大事な表ですので、こまめに入出金予定をチェックしながら作成を進めてください。

資金繰り表作成のポイント:

飲食店事業計画書の融資審査ポイント:金融機関の視点

銀行が事業計画書で最初に見るポイント

金融機関では、窓口の担当者だけでなく、組織として審査を行いますので、他の審査をする人が見たときに、事業計画書の書かれている内容に説得力があるか、という視点も意識しましょう。

金融機関が特に注目する項目:

  1. 経営者の経験・実績(飲食業での経験年数、実績)
  2. 事業の実現可能性(市場分析の妥当性)
  3. 返済能力(収支計画の現実性)
  4. 担保・保証人の有無

融資担当者を納得させる数字の示し方

説得力のある事業計画書にするためのポイント:

  1. 具体的な数字を使う

    • 「多くのお客様」ではなく「1日平均60名のお客様」
    • 「利益が出る」ではなく「月商300万円、粗利益45%で月利益45万円」
  2. 数字の根拠を明示する

    • 客数予測の根拠(立地の人通り、競合店の状況など)
    • 原価率の計算根拠(メニュー別原価の積み上げ)
  3. リスク要因とその対策も記載する

    • 最悪のケースも想定した収支シミュレーション
    • 売上が予測を下回った場合の対応策

補助金・助成金の活用と申請のための計画書作成

開業資金に補助金や助成金を活用する場合にも、事業計画書の提出が求められます。補助金の採択には、自治体や実施機関によって、それぞれ制度の要件がありますので、それらの要件にそって計画書を作成する必要があります。実施される補助金制度の主旨を踏まえ、なぜその事業に取り組むか、将来どのような効果が得られるか、といった視点でストーリー性をもって記載することがポイントです。

主な飲食店向け補助金・助成金:

飲食店事業計画書作成の実践ステップ

情報収集とリサーチの方法

効果的な情報収集の方法:

  1. 業界団体(日本フードサービス協会など)の統計資料の活用
  2. 商圏調査(昼夜の人口、年齢層、世帯年収など)
  3. 競合店の客層・客単価・回転率の観察
  4. 先輩経営者へのインタビュー
  5. 専門書やウェブサイトでの業界動向調査

事業計画書テンプレートの活用法

事業計画書は、一人ひとりのビジネスが違いますので、他人の計画書をそのまま真似をしても意味がありませんが、初めて計画書を作成する場合には、参考にできる点も多くあります。

テンプレート活用のポイント:

プロフェッショナルのチェックと改善点の見つけ方

完成した事業計画書は、以下の人にチェックしてもらうと良いでしょう:

飲食店開業の諸手続きと準備

営業許可申請と必要な法的手続き

飲食店を開業する場合、食品衛生法に基づき保健所の「飲食店営業許可」が必要になります。一般的な申請・許可までには各種書類や手順が必要となりますが、これは各都道府県の所轄となっており、細かい部分は保健所によって異なります。詳細については、所轄の保健所に問い合わせることをお勧めします。また、深夜(午前0時から日の出前)において酒類の販売を行なう場合は、「深夜酒類提供飲食店営業」として別途、公安委員会への届出も必要になります。

営業許可申請の流れ:

  1. 保健所に事前相談
  2. 着工前に平面図を保健所へ持参し、設備面でのアドバイスを受け、必要な提出書類をもらう
  3. 申請書類の作成・提出
  4. 施設検査
  5. 営業許可取得

税務署への届出手続き

個人で開業する場合は事業開始月から1カ月以内に「開業届」「青色申告承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを所轄の税務署へ提出しなければなりません。一方、法人で開業する場合は、設立後2カ月以内に「法人設立届出書」「青色申告承認申請書」「棚卸資産の評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを所轄の税務署へ提出します。詳細については、所轄の税務署に問い合わせてください。

飲食店開業前後の集客戦略

開業前におこなうべきマーケティング活動

飲食店開業時の代表的な集客販促方法は、インターネット関連の方法とアナログな方法に分けられます。どちらが良いということはなく、あなたが設定した顧客ターゲットにどの方法が合っているのかを考えて選んでください。

開業前の効果的なマーケティング施策:

  1. SNSアカウントの開設と定期的な情報発信
  2. Googleマイビジネスへの登録
  3. プレオープンイベントの実施
  4. 近隣住民や企業へのチラシ配布
  5. 地域メディアへのプレスリリース配信

開業後の顧客関係構築のポイント

開業直後において、重要なことはいかに優良顧客を作るかです。そのためには顧客との関係性の強化が必要となります。

顧客関係構築のための施策:

  1. 顧客データベースの構築(誕生日や好みの記録)
  2. リピーター向け特典の用意
  3. 定期的なメルマガやLINE配信
  4. 季節ごとの限定メニューやイベントの実施
  5. 顧客からのフィードバックを積極的に取り入れる

飲食店業界の最新動向と事業計画への反映

コロナ後の消費者行動の変化

コロナ禍が飲食店の利用に与えた影響は大きく、多くの消費者が「利用頻度が減った」と回答しています。これに「影響はあったが、また元に戻った」という回答を合わせると過半数に及びます。やはり、飲食店にもコロナ禍は大きな影響を与えたと考えられます。

新たなビジネスモデルの可能性

フードトラック(キッチンカー)は、コロナ禍で大打撃を受けた飲食の領域にありながら、密を避ける社会的なニーズなどを巧みに捉えて成長している業種の一つです。東京都福祉保健局の令和3年版「食品衛生関係事業報告」によると、都内の「飲食店営業の自動車数」は、2019年の3381件から2020年は3794件に増加しています。外食大手チェーンや人気店なども続々と参入しています。

事業計画に反映すべき最新トレンド:

  1. テイクアウト・デリバリーの強化
  2. フードトラック展開の検討
  3. サブスクリプションモデルの導入
  4. デジタル化(キャッシュレス決済、予約システム)
  5. 持続可能性への配慮(フードロス削減、環境配慮型包装)

設備資金・運転資金の調達と返済計画

設備資金調達の考え方

設備投資のための資金は回収するまでにはかなりの年月を必要とするので、できるだけ自己資金で賄いたいものです。もし借入金を利用するのであれば、できるだけ返済期間が長期のものを利用しましょう。

運転資金調達の考え方

飲食店は毎日の売上のほとんどが現金として手元に入ってくるため、一般には原材料や商品の仕入れ代金を借り入れる必要はありません。しかし、ボーナスなど一時的に多額の資金を必要とするようなときには、運転資金を短期借入するケースもあります。この短期借入は比較的容易な手続きで借りられる場合があるが、目的用途の不明確な短期借入は行なわないことが大切です。

自己資金の確保と借入金のバランス

起業に際し、どの程度のリスクを持てるのか?自身で賄える金額を検討するためのシートを活用することが重要です。当たり前ですが、借金は返済しないといけません。なるべく自己資金でまかないましょう!

まとめ:飲食店の事業計画書で成功への第一歩を踏み出そう

飲食店開業という夢を実現するためには、情熱だけでなく綿密な計画が不可欠です。事業計画書は単なる書類ではなく、あなたの夢を実現するための設計図であり、成功への道しるべとなるものです。

事業計画書は、同じ内容であっても、誰に伝えるのかを意識して計画を記載することで、協力を得られる可能性も高くなるといえるでしょう。

本記事で紹介した事業計画書作成のポイントを参考に、あなたの飲食店ビジネスを成功させるための確かな一歩を踏み出してください。まずは事業計画書のテンプレートをダウンロードし、自分のビジネスアイデアを形にしていきましょう。

最後に、事業計画書は完成して終わりではなく、定期的に見直し、実績と比較しながら改善していくものです。PDCAサイクルを回しながら、常に最適な経営判断ができるよう、この大切なツールを活用してください。

全体像はこちら:飲食店開業の流れ|失敗しない12のステップ

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