飲食店でアルバイト・正社員を採用するとき、1人当たりいくらかかるのか?採用単価の計算方法から、求人広告費・タイミーなどスポットワーク・ハローワーク・SNS採用まで採用チャネル別に費用を徹底比較。開業初期の採用予算の目安と、コストを抑えながら質の高い人材を確保する具体的な削減策をわかりやすく解説します。

飲食店を開業するとき、「スタッフを集めるのにどのくらいのお金がかかるのか」が見えていないと、開業資金の計算が正確にできません。家賃や設備費と違って採用コストは変動しやすく、見落とされやすい費用のひとつです。
採用単価とは、「採用活動にかかった総費用 ÷ 採用できた人数」で算出する指標です。
採用単価 = 採用総コスト ÷ 採用人数
算入すべき費用項目は、求人媒体への掲載費・成果報酬費だけではありません。選考対応にかかるオーナー・店長の人件費(面接1件あたり30〜60分程度)、入社後の研修・ユニフォーム・健康診断といったオンボーディング費用も含めて初めて「本当の採用コスト」が見えてきます。
業界比較で見ると、飲食業の採用単価はIT・金融などの専門職と比べると低水準です。しかし飲食業は離職率が高く、厚生労働省「雇用動向調査」によると宿泊業・飲食サービス業の離職率は年26〜27%程度(パートタイム労働者に限れば30%前後)で全産業トップクラスの水準が続いています。そのため、同じポジションで採用を繰り返す頻度が他業種より高くなります。1回の採用コストが低くても、年間トータルで見ると採用費は膨らみやすい構造です。
近年は、最低賃金の上昇(全国加重平均は2023年度に初めて1,000円を超え、2025年度には1,121円に到達)と人手不足の深刻化を背景に、飲食業のアルバイト採用単価は上昇傾向にあります。有料媒体を利用した場合のアルバイト1人当たりの採用単価は3万〜6万円程度(調査によっては5万円を超える水準)が相場感として語られています(ツナグ働き方研究所・ノーザンライツ等の民間調査レポートを参照)。
採用コストは一度払えば終わりの「一時費用」ではなく、離職が起きるたびに再発する変動費です。この構造認識を持つことが、後述する削減策を実効的に活用するための出発点になります。
飲食店がアルバイトを1名採用するときの費用は、利用するチャネルによって大きく異なります。
チャネル | 採用1人当たりの目安コスト |
|---|---|
有料求人媒体(掲載型・応募課金型) | 3万〜6万円 |
ハローワーク | 0円(無料) |
SNS・自社サイト | 0〜5,000円程度(運用工数が別途発生) |
スポットワーク(タイミー等) | 勤務時間×時給の約30%(手数料) |
採用単価をより正確に把握するには、「何人の応募があれば1人採用できるか(採用率)」も把握しておく必要があります。飲食業界の平均的な採用率は応募者の20〜30%程度とされており、10人の応募があれば2〜3名を採用できる計算です。応募課金型の媒体で応募1件ごとに3,000〜8,000円かかる場合、1採用あたり1万5,000〜4万円という試算になります。有料媒体を活用する際は、この「母集団コスト」の感覚を忘れないようにしましょう。
正社員の採用単価はアルバイトと比べて桁が変わります。採用手法によって費用構造が異なるため、3パターンで整理します。
①有料求人媒体(掲載型) 求人サイトへの掲載費用は1掲載あたり10万〜30万円程度が一般的とされますが、媒体・プラン・地域によって大きく異なります。複数媒体への同時掲載や掲載期間の延長で費用はさらに増加します。採用に至らなかった場合でも費用が発生するため、採用率が低いと1採用当たりのコストが大幅に膨らむリスクがあります。
②人材紹介(成功報酬型) 転職エージェントを利用すると、採用が決まった時点で「理論年収の30〜35%」程度(交渉により前後します)を紹介手数料として支払うのが一般的です。飲食業の正社員(店長クラス)の年収が300万〜350万円程度の場合、1人当たり90万〜120万円程度のコストが発生します。採用できなければ費用は発生しませんが、決まった場合の負担は大きいため、財務的に余裕がある段階で検討するチャネルです。
③自社採用(SNS・リファラル) InstagramやX(旧Twitter)での求人発信や、既存スタッフからの紹介(リファラル採用)を活用すると、媒体費はほぼゼロです。ただし採用できるまでの期間が読みにくく、急ぎの補充には不向きです。開業前から継続的に情報発信を行い、候補者との接点を事前に作っておくことが重要です。
各採用チャネルを費用感・向いているシーン・注意点の3軸で比較したのが次の表です。
チャネル | 費用感 | 向いているシーン | 注意点 |
|---|---|---|---|
有料求人媒体(掲載型) | 3万〜30万円/採用 | 短期で母集団を確保したい | 採用率低いと割高 |
クリック課金型(Indeed等) | 1クリック100〜300円程度 | 費用対効果を管理したい | クリック数次第で合計額が変動 |
応募課金型媒体 | 3,000〜8,000円/応募 | 応募単価を固定したい | 採用率が低いと割高 |
タイミー等スポットワーク | 時給の約30%(手数料) | 急な欠員・繁忙期の補填 | スポット利用が前提(タイミーは直接雇用への移行は無料) |
ハローワーク | 無料 | コストを抑えたい開業初期 | 応募まで時間がかかりやすい |
SNS・自社採用 | ほぼ0円 | ブランド力が育ってきた段階 | 運用に時間と継続性が必要 |
リファラル(紹介) | インセンティブ代のみ(1〜3万円程度) | 信頼できる人材を確保したい | 人間関係の管理が必要 |
求人広告には大きく分けて掲載型と成果報酬型の2つの課金モデルがあります。
掲載型は、一定期間・一定の掲載枠に対して費用を支払います。タウンワーク・アルバイトEXなどが代表例で、飲食業のアルバイト求人では1掲載あたり3万〜10万円程度が一般的な出稿額とされます(媒体・プラン・地域により大きく異なります)。月間の求人広告費としては、小規模飲食店で5万〜15万円程度を想定しておくと現実に近い水準です。採用できた人数で割ると1採用あたり3万〜6万円になるケースが多い反面、応募が集まらなかった月は「採用0件・費用だけ発生」というリスクが生じます。
成果報酬型には、課金単位の異なる2つのタイプがあります。ひとつはクリック課金型(CPC)で、IndeedのCPCプランが代表例です。求人がクリックされるごとに課金される仕組みで、1クリックあたり100〜300円程度が相場です。応募1件あたりの単価(CPA)はクリック単価×応募率の結果として決まり、結果的に数千円規模になることが多くなります。もうひとつは応募課金型で、応募1件ごとに3,000〜8,000円程度が課金される媒体です。いずれも応募や反応がなければ費用は発生しませんが、採用率が低いと費用が積み上がり、結果的に1採用あたりのコストが掲載型を上回ることもあります。自店の採用率の実績を把握した上で、各モデルを使い分けることが重要です。
タイミーをはじめとするスポットワークサービスは、「採用」ではなく「業務単位での人材手配」という性格を持ちます。タイミーの課金モデルはワーカーへの報酬金額の30%を手数料として支払う構造です(このほか、ワーカー1人あたり月220円・税込の振込関連手数料が発生します)。
具体的に試算すると、時給1,100円のスタッフが1日8時間働いた場合の手数料は、1,100円×8時間×30%=2,640円です。繁忙期に月20人分・各1日稼働を依頼すると、手数料だけで52,800円になります。急な欠員補充や週末の繁忙対応などスポット利用に絞れば費用対効果は高いといえます。
なお、タイミーの場合、スポットワークで働いた方を正規のアルバイトとして直接雇用に切り替える際の紹介手数料は無料で、申請も不要です。良い人材に出会えたらそのまま自店のスタッフとして迎え入れられるため、「お試し採用」のチャネルとしても活用できます。ただし、スポットワークサービスの中には直接雇用への移行時に手数料が発生するものもあるため、利用前に各サービスの規約を確認しておきましょう。
「時給1,100円×週25時間=月額約11万円」という単純計算で採用予算を見積もると、実際の支出が想定を超えてしまいます。アルバイト雇用には給与以外に次のような付随コストが発生します。
これらを合算すると、時給1,100円・週25時間勤務のアルバイト1人の月次コストは給与の110,000円に加え、1〜2万円程度の付随費用が乗ります。採用時の初期費用(媒体費・健康診断・制服)まで含めると、初月は15万円を超えることも珍しくありません。「給与の10〜15%を付随コストとして上乗せして計算する」が実務上の安全な見積もり方法です。
飲食業の経営指標としてよく使われるFL比率(Food+Labor)では、Lである人件費は売上の30%前後、FLコスト合計で55〜60%以内が目安とされています。採用コストはこのL比率を押し上げる一因であり、開業計画の段階から「人材確保の総費用」として損益計算に組み込む必要があります。
採用コストの削減は、「安い媒体を選ぶ」だけでは不十分です。離職→再採用の悪循環を断ち切ることが、中長期で最も効果の高い削減策です。4つのアプローチと、開業時の予算設計の考え方をあわせて解説します。
削減策① SNS採用
Instagram・X・TikTokなどで店舗の雰囲気や働く姿を発信し、求人への関心を自然に高める方法です。媒体費はゼロですが、発信の継続性とコンテンツの質が応募数に直結します。「スタッフの一日」「まかない飯」「仕込みの様子」といった職場のリアルを見せるコンテンツを定期投稿し、プロフィール欄に求人情報と連絡先を常設しておくことが基本です。開業前から発信を始めてフォロワーを育てておくと、開業時の採用活動がスムーズになります。
削減策② リファラル採用
既存スタッフに知人・友人を紹介してもらうリファラル採用は、採用単価が最も低いチャネルのひとつです。採用確定時に1〜3万円程度の謝礼を設定するケースが多く、媒体費と比べると圧倒的に安価です。紹介者が職場のリアルを事前に伝えているためミスマッチによる早期離職が起きにくい点も大きなメリットです。ただし、友人・知人が同じ職場にいることで人間関係のトラブルが生じるリスクも考慮し、就業規則の整備とセットで運用しましょう。
削減策③ ハローワーク・無料掲載枠の活用
ハローワークへの求人票掲載は完全無料で、Indeed(無料枠)も同様にコストゼロで利用できます。応募が来るまでに時間がかかる場合がある点、応募者の質にばらつきが生じやすい点は否定できませんが、開業初期のタイトな予算下では積極的に活用すべきチャネルです。ハローワークとIndeed無料枠を併用しながら、費用対効果の高いクリック課金型・応募課金型の媒体を補助的に組み合わせる戦略が現実的です。
削減策④ 定着率の改善
採用コスト削減で最も見落とされがちな視点です。仮に1人あたりの採用単価が3万円であっても、半年以内に離職して再採用が必要になれば同じポジションに年間6万円の採用費がかかります。これが複数名・複数回繰り返されると、年間数十万円の採用費が消えていきます。
定着率を高める具体策としては、入社時のオリエンテーション(業務マニュアルの整備・OJTのペアリング)、定期的な1on1面談による不満の早期発見、勤務シフトの柔軟性確保などが有効です。採用費への投資と同時に、定着施策にも予算を配分することが採用ROI(費用対効果)の最大化につながります。
開業時の採用予算の組み立て方
採用予算は「想定スタッフ数 × 採用単価の相場」で逆算するのが基本です。たとえば、開業時に正社員1名+アルバイト6名を採用する計画であれば、次のような試算になります。
ハローワークやSNS採用を主軸にすれば10万〜20万円程度まで抑えられる可能性もありますが、採用完了までの期間が長引くリスクをセットで考慮してください。
飲食業における給与相場は、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、宿泊業・飲食サービス業の一般労働者の所定内給与は平均約27万円です。アルバイトの時給は民間調査で全国平均1,050〜1,200円程度が目安とされています。採用コストと給与コストを合算すると、開業初年度の人材確保に係る総費用は事前計画の1.5〜2倍になることも珍しくないため、資金計画には一定の余裕を持たせておくことが重要です。
また、雇用を増やす際は厚生労働省のキャリアアップ助成金などの雇用関連助成金も活用できます。正社員化コースでは、有期雇用から正規雇用への転換で中小企業の場合1人あたり原則40万円が支給され、重点支援対象者(雇入れから3年以上の有期雇用労働者、母子家庭の母等)の転換であれば最大80万円となります(令和7年度時点。支給要件・金額は年度により変わります)。採用コストの一部を補填できる可能性があるため、開業前に管轄のハローワークや社会保険労務士に確認しておきましょう。
有料求人媒体を利用した場合、1人当たり3万〜6万円程度が目安です。ハローワークやIndeed無料枠を活用すれば費用をほぼゼロに抑えることもできます。チャネル別の詳細な数値はアルバイト採用コストの相場で解説しています。
有料求人媒体(掲載型)では15万〜30万円程度、人材紹介(成功報酬型)では理論年収の30〜35%程度(飲食正社員なら90万〜120万円程度)が目安です。SNS採用・リファラルを活用すれば数万円以下に抑えることも可能です。パターン別の費用構造は正社員採用コストの相場をご覧ください。
採用単価は「採用総コスト ÷ 採用人数」で計算します。算入すべき費用は求人媒体費だけでなく、面接対応の人件費・研修費・制服代・健康診断費などオンボーディングにかかる費用もすべて含みます。
掲載型媒体では1掲載あたり3万〜10万円、月次の出稿額は小規模店で5万〜15万円程度が相場とされています(媒体・プラン・地域により異なります)。クリック課金型(Indeed等)は1クリック100〜300円程度、応募課金型は応募1件あたり3,000〜8,000円が目安になります。費用構造の詳細は求人広告費の相場で解説しています。
タイミーはワーカー報酬の30%が手数料として発生します(別途、ワーカー1人あたり月220円・税込の振込関連手数料あり)。時給1,100円・8時間稼働の場合、1人1日あたり2,640円程度が目安です。急な欠員補充や繁忙期の補填には費用対効果が高く、タイミーの場合は気に入った人材を手数料無料で直接雇用に切り替えることもできます。詳しくはタイミー・スポットワークサービスの採用単価をご参照ください。
飲食業界では応募者の20〜30%程度が採用に至るとされています。10件の応募があれば2〜3名採用できる計算で、この採用率を前提に媒体費を逆算することで現実的な採用単価を見積もることができます。採用率が低い場合は求人票の内容や選考フローの見直しが先決です。
給与以外に交通費・健康診断費(3,000〜8,000円程度。フルタイムに近い働き方の場合は雇入れ時健診が法定義務)・制服代・雇用保険料(週20時間以上勤務かつ31日以上の雇用見込みで適用。2026年度の事業主負担は給与の0.85%)が発生します。週30時間以上の勤務など加入要件を満たす場合は社会保険の事業主負担(給与の約14〜15%)も加わります。給与の10〜15%を付随コストとして上乗せして計算しておくと安全です。詳細はアルバイトを雇うときの人件費計算をご覧ください。
主な削減策は①SNS採用(費用ゼロで求人情報を発信)、②リファラル採用(スタッフ紹介で媒体費不要)、③ハローワーク・無料掲載枠の活用、④定着率の改善(離職→再採用の悪循環を断つ)の4つです。特に定着率の改善は長期的に最も効果が大きく、採用ROIを根本から改善します。具体的な実施方法は採用コストを削減する方法で詳しく解説しています。
正社員1名+アルバイト6名程度の規模であれば、有料媒体利用で33万〜61万円程度を採用費の目安として計上してください。SNS採用・ハローワーク中心であれば10万〜20万円程度に抑えられる可能性もありますが、採用完了までの期間が長引くリスクを織り込んでおくことが重要です。逆算の考え方は開業時の採用予算の組み立て方で解説しています。
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、宿泊業・飲食サービス業の一般労働者の所定内給与は平均約27万円です。アルバイトの時給は民間調査で全国平均1,050〜1,200円程度が目安とされています。地域・職種・経験年数によって差があるため、自店所在地の最低賃金と地域相場をあわせて確認した上で給与設定を行いましょう。
本記事の金額・制度情報は執筆時点の目安です。実際の費用は業態・規模・地域・時期により異なり、補助金・融資・許認可・税の最新かつ正確な情報・要件は各公式(日本政策金融公庫・中小企業庁・各自治体・税務署等)で必ずご確認ください。
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