飲食店開業で使える補助金・助成金・給付金の全種類を申請条件・上限額とともに一覧で比較解説。小規模事業者持続化補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金の適用可否から、地域別の調べ方・個人事業主や女性・外国人向け制度、採択率を上げる事業計画書のポイントまで2025〜2026年の最新情報を網羅。

飲食店開業に向けて「補助金が使える」と聞いても、何がどう違うのか整理できていない人は多いです。まず三つの概念を押さえておきましょう。
三者に共通するのは「返済不要」という点です。融資(日本政策金融公庫や民間銀行の借入)とは根本的に性格が異なります。
一点、最初に明確にしておきたい重要な前提があります。「飲食店開業専用の補助金」という単独の制度は現時点で存在しません。中小企業・小規模事業者向けの汎用制度を、自店の事業内容・規模・所在地に合わせて組み合わせて活用するのが正しいアプローチです。
なお、補助金は金額・枠・公募時期が公募回ごとに変動します。本記事は2026年初頭時点の情報を基にまとめていますが、申請前には必ず各制度の公式ページで最新の公募要領を確認してください。2025〜2026年時点で飲食店開業に関連性の高い国の主要制度を以下に整理します。
制度名 | 運営主体 | 補助上限額の目安 | 主な対象経費 | 公募状況 |
|---|---|---|---|---|
小規模事業者持続化補助金 | 全国商工会連合会/日本商工会議所(事務局) | 50万〜250万円程度 | 設備・内装・広告等 | 年複数回公募 |
中小企業新事業進出補助金(事業再構築補助金の後継) | 中小企業庁(事務局:中小機構) | 最大9,000万円程度 | 設備・建物・システム等 | 公募状況は要確認 |
ものづくり補助金 | 中小企業庁 | 製品・サービス高付加価値化枠で最大2,500万円程度(省力化枠等はさらに高額) | 革新的設備投資 | 年複数回公募 |
IT導入補助金(2026年公募から「デジタル化・AI導入補助金」に改称) | 中小企業庁(事務局:中小企業基盤整備機構) | 最大450万円程度 | ソフトウェア・システム | 年複数回公募 |
※IT導入補助金で「IT導入支援事業者」と呼ばれるのは、ツールを提供し申請を支援する登録事業者を指します。制度の運営主体は中小企業庁(事務局は中小企業基盤整備機構)である点に注意してください。
重要な実務上の注意点:補助金は「後払い(精算払い)」が原則です。採択されても、事業完了後に実績報告を提出し審査を経て初めて入金されます。開業時点では手元に資金がない状態が続くため、融資と組み合わせた資金計画が不可欠になります。補助金と融資の使い分けについては、別途資金調達ガイドも参照してください。
制度の全体像を検索したい場合は、中小企業庁が運営する「ミラサポplus」の補助金・助成金検索機能が便利です。キーワードや業種、地域で絞り込めます。
飲食店開業への適用を狙うなら、まず検討すべき制度がこれです。
対象者要件:飲食業(商業・サービス業のうち宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員数5名以下の小規模事業者が対象です。個人事業主も法人も申請できます。ただし注意したいのは申請のタイミングです。一般型・通常枠は「申請時点で既に開業し事業を行っている」ことが原則要件であり、開業日が申請日より後になる創業予定者は対象外となります。別申請類型である「創業型」でも、開業日が公募締切から過去3か年以内であること(=すでに開業済み)に加え、特定創業支援等事業の支援証明書が必要になります。
補助率・上限額:補助率は対象経費の2/3です。通常枠で上限50万円です。これに「インボイス特例(+50万円)」「賃金引上げ特例(+150万円。うち赤字事業者は補助率3/4)」を併用すると最大250万円程度まで引き上げられるケースがあります(特例や枠の設置は公募回ごとに変動します)。
主な対象経費の具体例:
ただし「単なる開業費用」という名目では採択されにくいです。「どのような販路拡大・集客課題を、どの経費で解決するか」というロジックが求められます。申請には商工会または商工会議所の確認・支援(事業支援計画書の発行など)が必須で、経営計画書と補助事業計画書の提出が必要です(非会員でも申請できます)。計画書の書き方は採択率に直結するため、後述のセクションで詳しく解説します。
公式情報・公募要領は地区によって事務局が異なります。商工会地区は全国商工会連合会、商工会議所地区は日本商工会議所が事務局となるため、自分の事業所がどちらの地区に該当するかを確認したうえで、各事務局の案内する正規サイトで最新の公募要領を確認してください。
まず前提として、これまで活用されてきた「事業再構築補助金」は第13回(2025年1月公募開始・3月締切)をもって新規募集を終了しています。後継として「中小企業新事業進出補助金」(補助上限最大9,000万円程度・補助率1/2)が新設されているため、現在検討するならこちらが対象となります。最新の公募状況は中小企業新事業進出補助金の公式サイトで確認してください。
「この種の制度で飲食店を開業できるか?」という問いに対する答えは、純粋な新規開業には原則適用できない、です。
これらの制度は既存事業者が「新分野展開」「事業転換」「業種転換」など思い切った事業再構築・新事業進出を行う場合に支援するものであり、事業実績がゼロの起業家は対象外となります。
適用できるケース:例えば既存の食品製造業が自社直売レストランを開業する、あるいは全く異なる業種から飲食店経営に業種転換するケースは対象になりえます。この場合、申請前の売上実績・既存事業の証明・転換の合理性説明が求められます。
補助上限額や補助率は申請枠によって大きく異なるうえ、制度の枠組み自体も移行・変更が続いています。申請を検討する際は、必ず公式サイトで最新の制度内容・公募状況を確認してください。
ものづくり補助金の目的は「革新的な製品・サービス開発や生産性向上のための設備投資」です。「ものづくり」という名称ですが製造業以外の事業者も申請できます。しかし飲食店開業への適用は限定的と考えた方がよいです。
厨房機器・内装・テーブル・椅子といった通常の開業設備一式は、審査において「革新性・新規性」が認められにくいため採択に至りにくいです。
例外的に申請可能性があるケース:
主な枠としては「製品・サービス高付加価値化枠」と「省力化(オーダーメイド)枠」があり、補助率は中小企業1/2・小規模事業者等2/3が基本です。製品・サービス高付加価値化枠は従業員規模に応じて上限が変わり、最大2,500万円程度(賃上げ特例で最大3,500万円程度)、省力化枠はさらに高額になります。ただし従業員5名以下の小規模な飲食店の場合、同枠での現実的な上限は750万円程度(特例適用で850万円程度)にとどまる点に留意してください。
加えて、近年の公募では給与支給対象の従業員が最低1名必要とされており、従業員0名では申請できません。開業直後で従業員を雇っていない事業者は特に注意が必要です。計画書で革新性を明確に示せなければ落選するため、まず自分の計画が「革新的な設備投資」に該当するかを認定支援機関に相談してから判断するとよいでしょう。詳細はものづくり補助金公式サイトを参照してください。
国の補助金に加えて、都道府県・市区町村が独自に設けている創業補助金・助成金も見逃せません。制度の種類は全国で無数に存在しますが、制度名・要件・公募時期は地域ごとにバラバラで全国共通の一覧は存在しません。
効率よく調べる3ステップ:
主要地域の具体例:
また「認定特定創業支援等事業」を市区町村から受けると、持続化補助金「創業型」や東京都「創業助成事業」など一部制度で申請要件・加点要素になり得るほか、登録免許税の軽減や信用保証の特例といった付随メリットもあります。商工会議所や創業支援機関の窓口で「認定創業支援を受けたい」と伝えると手続きを案内してもらえます。
個人事業主の場合:法人格がなくても小規模事業者持続化補助金や地方自治体の創業補助金は申請可能です。「補助金は法人しか無理」という誤解が多いですが、多くの制度は個人事業主を明示的に対象に含んでいます。ただし一部の制度では法人のみを要件とするケースもあるため、必ず募集要項で確認してください。
女性・若者起業家の場合:東京都には属性に着目した支援制度が複数あります。例えば「女性・若者・シニア創業サポート事業2.0」は信用金庫・信用組合を経由する低利融資制度で、女性・若者・シニアを対象としています。また商店街での開業を後押しする「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」(女性または39歳以下の男性が対象、上限最大844万円程度)もあります。一方で、東京都の「創業助成事業」そのものについては、性別・年齢を理由とした審査加点が明記された情報は確認できないため、加点の有無は最新の募集要項で必ず確認してください。制度ごとに対象者・支援内容が異なる点に注意してください。各制度の詳細は東京都中小企業振興公社や東京都の創業支援サイトで確認できます。
外国人の場合:在留資格「経営・管理」を取得している外国籍の人は、日本国内で法人を設立して飲食店を開業するケースが多いです。補助金・助成金の申請については制度ごとに国籍や在留資格の要件が異なるため、各募集要項での確認が必須です。外国人起業家向けの支援としては、東京都の「外国人創業人材受入促進事業」(いわゆるスタートアップビザを活用し、入国後一定期間の創業活動を認める制度)や、開業手続きを一括相談できる「東京開業ワンストップセンター」、英語・中国語・韓国語など多言語に対応する「東京都多言語相談ナビ(TMCナビ)」などがあります。補助金申請の際は在留資格が「経営・管理」である点を証明できる書類の準備を事前に行っておくとよいでしょう。
いずれの属性においても、公募ごとに要件が変わるため最新の募集要項の確認は省略できません。
補助金の審査で差がつくのは計画書の質です。経費の積算を細かく書いても、事業の「なぜ」と「どう」が伝わらなければ採択には至りません。
審査で評価される主な観点:
落選しやすい申請書の典型パターン:
事業計画書 作成チェックリスト:
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の活用:税理士・中小企業診断士・金融機関など、中小企業庁から認定を受けた専門家のことです。事業再構築補助金やその後継制度では申請時に認定支援機関との確認書(事業計画の共同策定)が求められ、小規模事業者持続化補助金でも計画書の精度向上に直結します。採択率を高めたいなら早い段階で相談しておくことを強く推奨します。
また、採択後も即座に入金されるわけではない点を忘れないでください。補助金は事業完了→実績報告→審査→入金というプロセスをたどるため、採択から入金まで数ヶ月かかります。この間の運転資金をつなぐ融資の準備も、採択と並行して進める必要があります。事業計画書の書き方についてのより詳細な解説は、別記事で詳しく取り上げています。
国の汎用制度として小規模事業者持続化補助金・ものづくり補助金・IT導入補助金(2026年公募から「デジタル化・AI導入補助金」に改称)などがあります。既存事業者の事業転換向けには、事業再構築補助金の後継である中小企業新事業進出補助金があります。これに加え、都道府県・市区町村が独自に設ける創業補助金・創業助成金が全国に多数存在し、二層構造で活用できます。飲食店開業専用の制度は存在しないため、自店の規模・業態・所在地に合った制度を選ぶ視点が重要です。
制度によって大きく異なります。小規模事業者持続化補助金は通常枠で上限50万円、特例の併用で最大250万円程度です。ものづくり補助金は枠や従業員規模によって変わり、製品・サービス高付加価値化枠で最大2,500万円程度(省力化枠等はさらに高額。ただし小規模な飲食店では実質的な上限が低くなります)。東京都創業助成金は限度額400万円です。複数制度を組み合わせれば数百万円規模になりえますが、それぞれに審査・要件があり確実に受給できる保証はありません。最新の上限額は各制度の公式ページで公募回ごとに確認することが必須です。
従業員5名以下の飲食店(個人事業主含む)なら申請できます。厨房機器・POS・内装改装・広告宣伝費などが対象経費として認められやすいです。ただし通常枠は申請時点で既に開業していることが原則要件で、将来開業予定というだけでは対象外になる点に注意してください。申請には商工会または商工会議所の支援を受けながら経営計画書と補助事業計画書を作成・提出する必要があります。
通常の内装・厨房設備一式を導入するだけの開業目的では対象外になるケースが多いです。IoT連動の自動調理設備導入や革新的な食品製造プロセスの構築など、革新性・生産性向上の要素が明確に伴う場合のみ申請可能性があります。また近年の公募では給与支給対象の従業員が最低1名必要とされており、従業員0名では申請できない点にも注意してください。まず自分の計画が「革新的な設備投資」に該当するかを認定支援機関に相談してから判断するとよいでしょう。
事業実績がない純粋な新規開業は原則として対象外です。また事業再構築補助金自体は第13回(2025年)で新規募集を終了しており、現在は後継の中小企業新事業進出補助金へ移行しています。既存事業者が業種転換・新分野展開として飲食店を開業するケースは対象になりえますが、申請には既存事業の売上実績の証明や、転換の合理性を説明した事業計画が必要で、認定支援機関との共同での計画策定も求められます。
小規模事業者持続化補助金・多くの地方自治体の創業補助金は個人事業主でも申請可能です。法人格は必須ではありません。ただし一部の制度では法人のみを申請要件とする場合があるため、必ず各制度の募集要項で確認してから申請準備を進めてください。
補助金は採択審査があり、申請者同士の競争をくぐり抜けた事業者だけが受給できます。助成金は所定の要件を充足すれば原則として受給できます(雇用関連が多いです)。どちらも返済義務はありません。これに対し日本政策金融公庫や信用保証協会を通じた融資は返済が必要な別物であり、混同しないよう注意が必要です。
まずJ-Net21の補助金・助成金検索で都道府県と業種(飲食業)を指定して絞り込みます。次に地元の商工会議所または中小企業支援センターに相談すると、その地域特有の制度を案内してもらえます。さらに市区町村の産業振興課・経済振興課のウェブサイトを定期的にチェックする習慣をつけると、公募開始の情報を逃しにくいです。地方自治体の制度は名称・金額・公募時期が流動的なため、最新の募集要項で必ず確認してください。
競合との差別化・数値目標の具体性・地域経済への貢献を計画書に明確に盛り込むことが基本です。「おいしい料理を提供する」といった抽象的な記述は評価されにくく、「出店エリアの○○層に対して△△という課題を解決する」という論理構造が必要になります。認定経営革新等支援機関に計画書レビューを依頼することで採択率を高められます。
女性・若者・シニアを対象とした制度(東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業2.0」や、商店街開業向けの「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」など)が複数存在します。外国人起業家向けには、東京都の「外国人創業人材受入促進事業」や「東京開業ワンストップセンター」「東京都多言語相談ナビ(TMCナビ)」など、多言語対応の支援施策があります。外国人が補助金を申請する場合は在留資格(「経営・管理」等)と国籍の要件を制度ごとに確認することが必須で、条件を満たさなければ申請自体が受け付けられない場合があります。
本記事の金額・制度情報は執筆時点の目安です。実際の費用は業態・規模・地域・時期により異なり、補助金・融資・許認可・税の最新かつ正確な情報・要件は各公式(日本政策金融公庫・中小企業庁・各自治体・税務署等)で必ずご確認ください。
開業準備のヒントになる記事をピックアップしました。

飲食店のホームページを作ったのに集客できない原因と解決策を解説。「渋谷 イタリアン」など地域名×業態キーワードで検索上位を狙うローカルSEOの手順、Googleビジネスプロフィール設定・最適化、口コミ獲得、費用・外注の判断基準、禁止事項まで優先順位つきで紹介します。
2026年7月21日

飲食業界は全業種でも特に離職率が高く、採用してもすぐ辞められる負のサイクルが経営を直撃します。定着率を上げるためには採用設計・オンボーディング・職場環境の改善・評価制度の整備を一気通貫で行うことが不可欠。本記事ではアルバイト・社員を問わずスタッフが長く働きたくなる職場をつくるための具体施策を優先度付きで解説します。
2026年7月21日

飲食店を初めて開業するオーナー向けに、スタッフ採用の全工程を網羅したガイド。求人計画の立案から媒体選定・求人票の書き方・面接の進め方・内定後の労務手続きまでを個人経営店の目線でステップ形式で解説。採用コストの相場、未経験者や50代の採用対応、すぐ辞めない職場をつくる定着設計まで一気通貫でわかります。
2026年7月21日