飲食店の家賃相場を、東京主要エリア(銀座・渋谷・新宿・池袋)ごとの坪単価と10坪・20坪別の月額目安で具体的に示します。売上に対する適正家賃比率(10〜15%)の計算手順と月商から上限を逆算する方法、ワンオペ・バーなど業態別の判断基準、店舗賃料相場の調べ方と大家の家賃設定ロジックを使った交渉根拠まで解説します。

飲食店の月額家賃は、次の基本式で算出されます。
月額家賃 = 坪単価 × 坪数
たとえば坪単価3万円の物件を15坪で借りると、月額45万円が家賃の基準値になります。ここに共益費(管理費)が別途加算されるケースも多く、実質的な固定費はさらに上乗せされます。共益費は定額制のほか「坪あたり数百〜数千円」「賃料の5〜10%程度」といった形で設定されることも多く、坪数の大きい物件では月数万円になる場合もあるため、賃料と合わせて必ず確認してください。
東京都心と郊外・地方では、同じ坪数でも家賃水準に大きな差があります。都心の繁華街では坪単価が5万円を超えることも珍しくない一方、地方都市や郊外の幹線道路沿いでは1万円以下の物件も存在します。まずはエリア別の坪単価相場を把握したうえで、自店の収益計画と照らし合わせる視点が重要です。
東京都内でも立地によって坪単価には大きな幅があります。以下の表は、不動産ポータル各社の掲載物件の集計をもとにした、各エリアの路面1階・地下/2階以上別の坪単価の目安です。店舗賃料には公的な統計が存在しないため、あくまで執筆時点の募集情報に基づく目安であり、時期や物件の条件によって変動します。
エリア | 路面1階(坪単価) | 地下・2階以上(坪単価) |
|---|---|---|
銀座 | 4万〜8万円 | 2万〜5.5万円 |
渋谷 | 3万〜6万円 | 1.5万〜4万円 |
新宿 | 3万〜6万円 | 1.5万〜4万円 |
池袋 | 2万〜4万円 | 1万〜3万円 |
赤坂 | 3万〜5万円 | 1.5万〜3.5万円 |
23区一般(住宅街・準幹線) | 1万〜2.5万円 | 0.7万〜1.8万円 |
なお、新宿でも歌舞伎町のような繁華街中心部では坪6万〜7万円程度の物件も見られるなど、同じエリア内でも通り一本で水準が変わる点に注意してください。
階層差と保証金について
路面1階は集客力が高いぶん坪単価が割高です。地下や2階以上(空中階)は路面1階の5〜7割程度、つまり3〜5割安くなるのが一般的な目安ですが、集客のためのサイン計画や看板費用が別途かかります。保証金(敷金)は東京の商業テナントでは賃料の6〜12ヶ月分が慣習的な目安です。近年は保証会社の活用で低くなるケースもありますが、契約前に必ず確認してください。
なお、店舗の賃料そのものを網羅した公的データは存在しません。ただし、国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」では地価公示や売買の取引価格情報を確認できるため、エリアの不動産価格水準を把握する参考になります。ポータルの募集賃料と合わせて確認すると、提示賃料が相場のどのあたりに位置するかを客観的に判断しやすくなります。
開業コストを具体的に試算するために、エリア別の坪単価レンジに実際の坪数を掛けたシミュレーション表を掲載します。
月額家賃の試算表(共益費別)
エリア区分 | 坪単価目安 | 10坪 | 15坪 | 20坪 |
|---|---|---|---|---|
都心繁華街(銀座・渋谷・新宿) | 3万〜6万円 | 30万〜60万円 | 45万〜90万円 | 60万〜120万円 |
準都心(池袋・赤坂・23区準幹線) | 1.5万〜3万円 | 15万〜30万円 | 22.5万〜45万円 | 30万〜60万円 |
郊外・地方都市 | 0.5万〜1.5万円 | 5万〜15万円 | 7.5万〜22.5万円 | 10万〜30万円 |
「家賃15万円」で入れる物件の逆引き目安
予算から物件を探す場合、家賃15万円であれば以下のような選択肢が現実的です。
月商から逆算して家賃上限を決める方法は後述しますが、予算先行で物件を探す際も、最終的には収益シミュレーションと照合することが不可欠です。
「家賃の安さ=トータルコストの安さ」ではないことを、物件タイプ別に整理します。
ショッピングセンターの賃料方式には、固定賃料・完全歩合・固定+歩合・最低保証付き歩合(最低保証売上方式)など複数のパターンがあり、施設や区画によって異なります。いずれにしても売上に連動する方式が多く、売上が伸びるほど賃料も上がる仕組みのため、好調な月ほど家賃負担が重くなります。飲食店の歩合率は物販テナントより高めに設定される傾向もあります。加えて、共用部維持費・販促分担金・売上報告システム費用なども別途発生することが多く、表面的な坪単価より実質負担は大きくなりやすい点に注意が必要です。
②ロードサイド物件
郊外の幹線道路沿いに多いロードサイド店舗は、路面テナントより坪単価が低い傾向があります。ただし、車でのアクセスが前提となるため、看板・外装・駐車場の整備費用が別途必要です。徒歩商圏がほぼ期待できないエリアでは、Web広告やチラシなどの集客投資も継続的にかかります。家賃は安くても、広告宣伝費を含めた固定費合計で試算することが重要です。
③居抜き物件
前テナントが設置した厨房設備・内装を引き継ぐ居抜き物件は、スケルトンからの工事費を大幅に節約できる点が魅力です。一般的にスケルトン物件と比べて初期投資を数百万円単位で圧縮できるケースがあります。ただし、賃料水準は周辺相場と同程度に設定されることがほとんどで、「居抜きだから家賃も安い」とは限りません。設備の状態確認と原状回復範囲の取り決めを事前に書面で明確にしておくことが重要です。
家賃比率は次の式で定義されます。
家賃比率(%)= 月額家賃 ÷ 月商 × 100
この数値が高いほど、売上に占める家賃の負担が大きいことを示します。以降では、業界目安となる比率の根拠・業態別の判断基準・人件費を含む総コスト構造・逆算方法の順に解説します。損益分岐点や収支計画全体の設計については、別途収支計画の記事を参照してください。
飲食業では「家賃比率は月商の10%以内」が業界の目安とされています。この根拠は、FL比率(食材費+人件費)との兼ね合いにあります。
一般的な飲食店のFL比率の目安は55〜60%です。これに家賃10%・その他経費(光熱費・消耗品・ロイヤルティなど)10〜15%を加えると、合計コストは75〜85%程度になります。つまり残る利益は15〜25%の範囲に収まり、家賃が10%を超えると利益が急速に圧迫されます。
三段階の判断基準と月商別の家賃上限
比率 | 判断 | 月商100万円 | 月商200万円 | 月商300万円 |
|---|---|---|---|---|
〜10% | 目安(健全) | 〜10万円 | 〜20万円 | 〜30万円 |
10〜15% | 警戒ライン | 10〜15万円 | 20〜30万円 | 30〜45万円 |
15〜20% | 上限(要注意) | 15〜20万円 | 30〜40万円 | 45〜60万円 |
月商200万円の店舗であれば、家賃の上限は20万円が目安です。30万円を超えると警戒ライン、40万円に達すると経営の維持が厳しくなります。
業態によって原価率・人件費率の構造が異なるため、許容できる家賃比率も変わります。一律に「10%」を当てはめるのではなく、自店のコスト構造に合わせた判断が必要です。
バー・ワインバー・カクテルバー
アルコール主体の業態は食材原価率が15〜30%程度と低く、FL比率を50%以下に抑えられるケースがあります。その分、家賃比率を15〜20%まで許容しながら収益を確保できる業態です。ただしビールやワインなど品目によっては原価率が30%を超えるものもあり、メニュー構成次第で水準は変わります。また客単価が高い分、客数の変動による売上ブレも大きく、繁閑差のある立地では保守的に試算することを推奨します。
ワンオペ(一人営業)のカフェ・定食屋
ワンオペは人件費を抑えられるため、その節約分を家賃に充てる発想が成り立ちます。人件費率が通常より5〜10ポイント低くなれば、家賃比率を15%前後まで許容できる余地が生まれます。一方で、一人で対応できる最大客数・営業時間に上限があるため、月商の天井が低い点に注意が必要です。家賃を高くしすぎると、満席でも赤字という状況に陥りかねません。
大衆食堂・ランチ主体の業態
客単価700〜1,500円程度の低単価・高回転型業態は、売上を確保するために多席数・高い回転率が不可欠です。食材原価率は25〜35%程度が目安とされ、ボリューム重視のメニュー構成では40%近くになることもあります。FL比率が60%近くになりやすいため、家賃は月商の8〜10%以内に収めることが現実的な目標です。
家賃比率を単独で10%に収めていても、FL比率が高ければ経営は苦しくなります。そこで重要になるのがFLR比率(食材費F+人件費L+家賃R)です。
FLR比率70%が経営の分岐点
FL比率55〜60%を前提とすると、家賃10%を加えたFLR比率は65〜70%になります。ここに光熱費・消耗品・システム費用・ロイヤルティなど残りの経費が加わるため、FLR比率が70%を超え始めると、残るオーナー利益や内部留保に回せる金額が急減します。
たとえば月商200万円の店舗でFL比率が65%(130万円)・家賃15%(30万円)であれば、FLR合計は160万円・比率80%です。残り40万円からその他経費を引くと、実質的な手残りはほとんどありません。
家賃を決める際は必ずFLコストの試算と合わせて検討し、FLR比率が70%以内に収まるかどうかを確認してください。
物件を選ぶ前に、次の3ステップで家賃上限を算出します。
ステップ①:現実的な月商を設定する
客単価 × 席数 × 1日の回転数 × 営業日数 で試算します。たとえば客単価2,000円・10席・1日2回転・月25日営業なら月商100万円です。ここで重要なのは「満席時の最大売上」ではなく、稼働率60〜70%程度の「現実的な達成可能売上」を使うことです。
ステップ②:月商に適正比率を掛けて家賃上限を算出する
月商 × 10〜15% = 家賃上限額
月商目標 | 家賃上限(10%) | 家賃上限(15%) |
|---|---|---|
150万円 | 15万円 | 22.5万円 |
200万円 | 20万円 | 30万円 |
300万円 | 30万円 | 45万円 |
FL比率が高い業態は10%ライン、バーや原価率の低い業態は15%ラインを目安にしてください。
ステップ③:家賃帯と物件候補を照合する
算出した家賃上限を、前述のエリア別坪単価テーブルと照合します。たとえば月商200万円・家賃上限20万円であれば、準都心エリア(坪単価1.5万〜3万円)で7〜13坪の物件が候補に入ります。この作業で「予算内で入れるエリアと坪数の組み合わせ」が明確になり、物件探しの軸がブレなくなります。
相場を把握してから物件交渉に臨むことで、提示賃料の妥当性を冷静に判断できます。このセクションでは、相場調査の具体的な手順・大家の賃料設定ロジック・交渉の進め方を一連の流れで解説します。
①不動産ポータルで坪単価レンジを把握する
アットホームのような総合系の事業用物件ページに加え、飲食店ドットコム(店舗物件探し)・テンポスマートなどの店舗物件に強いポータルを使い、以下の条件で絞り込みます。
ヒットした物件の賃料を坪単価に換算(月額賃料 ÷ 坪数)し、10件以上のサンプルが集まれば、そのエリアの坪単価レンジの上限・下限・中央値が見えてきます。提示賃料が相場の上限付近にある場合は交渉余地があり、下限付近であれば即決を視野に入れる判断材料になります。
②公的データで不動産価格の水準を確認する
国土交通省「不動産情報ライブラリ」(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)では、地価公示・地価調査や、売買の取引価格情報・成約価格情報を検索できます。賃貸借(賃料)の成約データそのものを調べられる公的データベースは存在しないため、賃料はポータルで確認しつつ、こうした公的データをエリアの不動産価格水準の参考として併用するのが現実的です。地価水準の高いエリアほど賃料相場も高くなる傾向があるため、提示賃料の妥当性を判断する補助線になります。
③店舗賃料の推移を把握する
ポータルでの定点観測も有効です。同じ物件が長期間掲載されている場合、空室期間が長く交渉余地がある可能性を示唆しています。一方、短期間で非公開になる物件は競争率が高く、相場より割安であることが多いです。
大家が賃料を設定する際の基本的なロジックを理解すると、交渉根拠をより明確に立てられます。
積算賃料の考え方
積算賃料とは、不動産鑑定の用語では「物件の基礎価格 × 期待利回り + 必要諸経費」で求める賃料のことです。大家側の視点では、おおむね次の積み上げ構造になります。
これを積み上げた積算賃料が大家の最低限確保したい水準であり、実勢賃料(市場での成約賃料)との乖離が大きいケースが交渉の糸口になります。
交渉余地が生まれるケース
交渉は感情論ではなくデータで進めることが重要です。以下の切り口を組み合わせて根拠を組み立ててください。
①周辺相場データを根拠にする
ポータルで収集した同エリア・同規模の坪単価データを整理し、「同条件の近隣物件の坪単価平均はX万円であり、本物件の提示額はその○%高い」という形で数値を示します。感覚的な値下げ要求より、データに基づく提案のほうが大家・仲介業者に受け入れられやすいです。
②長期空室の実態を確認する
物件の掲載開始日やオーナーへのヒアリングで空室期間を確認します。空室が3ヶ月以上続いている場合、「早期成約の代わりに賃料を○万円引いてほしい」という交渉が通りやすくなります。
③フリーレント期間の設定を提案する
賃料の恒久的な値下げが難しい場合でも、入居後1〜3ヶ月分を無償にする「フリーレント」であれば大家も受け入れやすい傾向があります。開業前の内装工事期間や初期集客期間の固定費負担を軽減する効果があり、実質的な初年度コストを削減できます。
④原状回復範囲の限定を交渉する
退去時の原状回復範囲を入居時に書面で明確にしておくと、退去時の費用リスクを抑えられます。特に飲食店は設備や内装の変更が多く、後から「すべて元に戻せ」と言われると高額な費用が発生するケースがあります。原状回復の免除・限定を賃料交渉とセットで提案するのも有効な手段です。
飲食店の坪単価は立地によって大きく異なり、東京都心の繁華街では3万〜8万円程度、準都心では1.5万〜3万円程度が目安です。地方都市や郊外では0.5万〜1.5万円前後が一般的な水準です。いずれもポータル各社の募集情報に基づく目安であり、時期や物件により変動します。詳細なエリア別テーブルは、本記事「東京主要エリアの坪単価相場」の項目をご確認ください。
東京都心の繁華街で10坪の場合、月額30万〜60万円程度が目安です。準都心では15万〜30万円、郊外・地方では5万〜15万円程度になります。10坪・15坪・20坪の詳細な試算は「10坪・20坪別の月額家賃シミュレーション」の表をご参照ください。
東京23区内でも立地によって差があり、銀座・渋谷・新宿などの繁華街路面では坪単価3万〜6万円以上、住宅街や準幹線沿いでは1万〜2.5万円程度が相場です。23区外の郊外では0.5万〜1.5万円程度まで下がります。
各エリアの路面1階坪単価の目安は次のとおりです。
地下・2階以上は路面1階の5〜7割程度(3〜5割安)の水準が一般的です。詳細は「東京主要エリアの坪単価相場」の表をご覧ください。
月商の10%以内が業界の目安とされています。15%を超えると警戒ライン、20%に達すると経営の持続が難しくなる上限の目安です。ただし業態によって許容できる幅が異なり、バーのように原価率が低い業態は15〜20%まで許容できるケースもあります。
「月額家賃 ÷ 月商 × 100 = 家賃比率(%)」で算出します。たとえば月商200万円で家賃20万円であれば、20 ÷ 200 × 100 = 10%です。この比率が高いほど収益を圧迫するため、事業計画策定時に必ず確認してください。
「月商 × 10〜15% = 家賃上限」が目安です。月商200万円なら20万〜30万円、月商150万円なら15万〜22.5万円が上限の目安になります。逆算の3ステップ(月商設定→比率計算→エリア照合)の詳細は「月商目標から家賃上限を逆算する3ステップ」をご参照ください。
業態によって変わります。アルコール主体のバーは原価率が低くFL比率を抑えやすいため、家賃比率を15〜20%まで許容できる余地があります。ワンオペは人件費節約分を家賃に充てる発想が成り立ちますが、売上の上限が低いため慎重な物件選びが必要です。一方、低単価・高回転の業態はFL比率が高く、10%以内が現実的な目標です。業態別の詳細は「業態・運営形態別の適正比率」をご確認ください。
主に2つの経路を組み合わせます。
両方を組み合わせることで、提示賃料が相場の上限か下限かを客観的に判断しやすくなります。具体的な手順は「不動産ポータル・公的データを使った相場調査の手順」をご参照ください。
本記事の金額・制度情報は執筆時点の目安です。実際の費用は業態・規模・地域・時期により異なり、補助金・融資・許認可・税の最新かつ正確な情報・要件は各公式(日本政策金融公庫・中小企業庁・各自治体・税務署等)で必ずご確認ください。
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