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飲食店の防火管理者は義務?選任基準・甲種乙種の選び方・届出手順を解説

飲食店で防火管理者の選任義務が発生するのは収容人員30人以上から。本記事では義務の有無を判断する収容人員・延べ面積の基準、甲種・乙種どちらの資格を取得すべきかの選び方、講習の費用・日程・申込み方法、そして資格取得後に行う消防署への選任届提出の手順まで、開業オーナーが一人で対応できるよう実務ベースで解説します。

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選任義務の有無を確認する|収容人員30人・建物全体での判断基準

飲食店を開業する前に、「自分の店では防火管理者の選任が必要なのか」を正確に把握しておくことが重要です。判断の基準は収容人員30人ですが、ここで注意したいのは、選任義務の有無は自店の区画単独ではなく、防火対象物(建物)全体の収容人員で判定されるという点です。建物全体を自店だけで使う単独店舗であれば、収容人員が29人以下なら原則として選任不要です。一方、テナントとしてビルに入居する場合は、自店が29人以下でも建物全体で30人以上であれば選任義務が生じることがあります。

消防法第8条が定める選任義務の根拠

防火管理者の選任義務は、消防法第8条に基づいています。同条は、一定規模以上の防火対象物の管理権原者に対して、防火管理者を定め、消防計画の作成や消火・通報・避難訓練の実施などを行わせることを義務づけています。飲食店は「特定防火対象物」(消防法施行令別表第一(3)項ロ)に分類されるため、収容人員の閾値は30人と定められています(工場・倉庫などの非特定防火対象物は50人)。なお、養護老人ホームなど自力避難が困難な方が利用する施設(同表(6)項ロ)を含む建物では収容人員10人以上で義務が生じる例外もありますが、飲食店等の特定用途であれば基準は30人です。

収容人員の算定方法

「収容人員」は、単純に席数を数えるだけではありません。飲食店((3)項)の算定方法は消防法施行規則第1条の3で定められており、従業者数と客席部分の人数を合算します。

  • 固定式のいす席:いすの数をそのまま計上します(長いす式の場合は正面幅を0.5mで割った数、端数は切り捨て)。カウンター席も固定式のいすであれば、いすの数で数えるのが通例です。
  • 固定式いす席以外の客席部分:床面積(㎡)÷ 3㎡ で人数を算出します。
  • 従業者数:上記の客席人数に、常時勤務するスタッフ全員の人数を足します。

たとえば、固定式のテーブル席16席・固定式のカウンター席6席・従業員3人の店舗であれば、収容人員は16+6+3=25人となります。一方、固定式のテーブル席20席・カウンター席6席・従業員5人であれば20+6+5=31人となり、選任義務が発生します。立食スペースなど固定式いす席以外の部分がある場合は、その床面積を3㎡で割った人数も加算します。「30人ちょうど」も義務対象になる点に注意してください。

判断マトリクス:自店の状況を当てはめる

以下の表は、建物全体を自店だけで使用する単独店舗の場合の判定です。

収容人員

延べ面積(建物全体)

選任義務

必要な資格

29人以下

問わない

不要

30人以上

300㎡未満

必要

乙種

30人以上

300㎡以上

必要

甲種

ここで言う「延べ面積」は、自店が占有する専有面積ではなく、防火対象物(建物)全体の延べ面積を指します。消防法施行令第3条が定める甲種・乙種の区分は建物全体の延べ面積で判断されるため、テナント入居の場合は賃貸契約書の専有面積ではなく、ビル全体の延べ面積を確認する必要があります。建物の規模が不明な場合は、ビル管理会社や管轄消防署に確認しましょう。

テナントの場合の考え方は次のとおりです。特定用途を含む建物全体の延べ面積が300㎡以上であれば、その建物は「甲種防火対象物」となり、入居するテナントも原則として甲種の資格が必要です。ただし例外として、甲種防火対象物内で管理権原が分かれているテナント部分のうち、収容人員が30人未満(飲食店等の特定用途の場合。事務所等の非特定用途は50人未満、(6)項ロ等は10人未満)の部分については乙種で足りるとされています(消防法施行令第3条・消防法施行規則第2条の2の2)。つまり、収容人員30人以上の飲食店が延べ面積300㎡以上のビルに入居する場合は、自店の専有面積が300㎡未満であっても乙種では足りず、甲種が必要です。

甲種・乙種の違いや費用・講習の申込み方法は、次のセクションで詳しく解説します。表を確認したらそのままお読みいただくことをおすすめします。

設計段階で収容人員を調整する選択肢

開業準備中の段階であれば、内装レイアウトを工夫して収容人員を29人以下に抑えるという選択肢もあります。たとえばテーブルを一つ減らす、カウンター席の幅を広げて実質的な席数を減らすなど、設計変更で義務発生を回避できるケースもあります。ただしこの方法が有効なのは単独店舗の場合です。テナントビルでは建物全体の収容人員で判定されるため、自店だけを29人以下にしても義務を回避できない場合があります。また、「席数を減らしても集客力を維持できるか」というビジネス上の判断も必要なので、消防署への事前相談を交えながら検討することをおすすめします。

飲食店開業に必要な許認可の全体像については、飲食店開業の許認可全体ガイドもあわせてご確認ください。

参考:消防庁「令和6年版 消防白書(防火管理制度)

テナント入居時の選任責任——管理権原者との役割分担

テナントとして商業ビルや複合施設に入居する場合、防火管理体制はやや複雑になります。

単独ビル(独立店舗)の場合は、建物全体の管理権原者が飲食店オーナー自身であるため、選任義務も一本化されています。

複合ビル・商業施設のテナントとして入居する場合は、選任義務の有無を建物全体の収容人員で判定し、義務が生じる建物では建物所有者およびすべてのテナント(各管理権原者)にそれぞれ選任義務が生じます。したがって、自店の区画単独では収容人員が30人未満であっても、防火管理者の選任が必要になるケースがあります(その場合は前述の特例により、乙種で足りることが多くなります)。入居前に、ビル管理会社や管轄消防署に建物全体の状況を確認しておきましょう。

また、消防法第8条の2が定める一定規模以上の建物では、ビル全体の防火管理を統括する「統括防火管理者」(ビルオーナーまたは管理会社側が選任)が置かれます。主な対象は、高さ31mを超える高層建築物や、特定用途を含み地階を除く階数が3以上かつ収容人員30人以上の建物などで、いずれも管理権原が分かれているものです。こうした建物では、統括防火管理者とは別に、各テナント側でも防火管理者を選任する必要があります。

オーナー自身が防火管理者を兼任することは問題ありません。必要な講習を修了していれば、資格要件を満たした上で兼任できます。また、店長や従業員を選任することも可能です。ただし、防火管理者には「管理的または監督的な地位にある者」であることが求められるため、権限のないアルバイトスタッフなどは選任できません。従業員を選任する場合は退職・異動時に解任と新たな選任の届出を消防署へ行う義務が生じます。人事異動の多い店舗では、オーナーや固定メンバーが資格を取得しておくほうが手続き負担を抑えられます。


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甲種か乙種か——自店に合う資格の種類・費用・講習申込みの手順

選任義務が確認できたら、次に「甲種」と「乙種」のどちらの資格を取得すべきかを判断します。

甲種・乙種の違い

区分

対象となる防火対象物

講習日数

修了考査(効果測定)

費用(協会実施分・目安)

甲種

延べ面積300㎡以上の特定防火対象物(飲食店を含む)

2日間

あり

8,000円

乙種

延べ面積300㎡未満の特定防火対象物等

1日間

あり

7,000円

飲食店は消防法上「特定防火対象物」に分類されます。建物全体の延べ面積が300㎡以上であれば甲種が必要で、300㎡未満であれば乙種で対応できます(テナントの特例は前セクションを参照してください)。修了考査(効果測定)は甲種・乙種とも講習の最後に実施されますが、講習内容をきちんと受講していれば難易度は高くありません(理解が不十分な場合は補講等の対応があります)。

費用は実施機関によって異なります。一般財団法人 日本防火・防災協会が実施する講習は甲種新規8,000円・乙種7,000円(テキスト代込み・令和7年度)ですが、東京消防庁など消防機関が自ら講習を実施する地域では別料金(例:東京消防庁の乙種は2,500円など)となっています。受講予定の実施機関の最新情報を必ず確認してください。

自店に合う資格の選び方(判断フロー)

  1. 建物全体の延べ面積を建築図面やビル管理会社への確認で把握する
  2. 建物全体が300㎡未満 → 乙種の講習を申し込む
  3. 建物全体が300㎡以上 → 甲種の講習を申し込む(テナントで自店区画の収容人員が30人未満の場合は乙種で足りる特例あり)
  4. 将来的な移転・増床で甲種が必要になる可能性が高い場合は、最初から甲種を取得しておくと再取得が不要になる

講習の申込み方法と開催地域

講習の申込み窓口は地域によって異なります。

  • 一般財団法人 日本防火・防災協会 公式サイト:協会主催の講習について、全国の日程・受付状況を検索でき、Webから申し込めます。
  • 消防機関が実施する地域:東京都内(一部地域を除く)は東京消防庁、千葉市・横浜市・大阪市など政令市の一部は各市消防局が自ら講習を実施しており、協会の一般向け講習は行われていません。該当地域では各消防機関の案内に従って申し込みます。

開催頻度は地域や年度によって大きく異なります。開業予定日から逆算して早めに日程を確認し、余裕をもって申し込むことが重要です。人気の日程は早く埋まることがあります。

開業スケジュールへの組み込み方

実務上は、開業日の1〜2ヵ月前には受講を完了しておくことを目標にスケジュールを組みましょう。講習修了後は遅滞なく消防署へ選任の届出を行い、防火管理者に関する手続きを完了させます。飲食店営業許可の取得と並行して進めると、開業準備全体がスムーズに進みます。

なお、講習修了資格は消防法施行令第3条に基づく全国共通のもので、修了証は全国どこでも有効です。たとえば東京で受講した修了証を使って、大阪の店舗の防火管理者として選任されることも問題ありません。


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消防署への選任届——書き方・提出タイミング・変更時の対応

資格を取得したら、管轄消防署への届出が必要です。届出を怠ると法的なリスクが生じるため、手続きの流れを確認しておきましょう。

提出先・タイミング

  • 提出先:法令上の届出先は消防長又は消防署長です(消防法第8条第2項)。実務上は、店舗を管轄する消防署の予防課などの窓口に提出します。
  • 提出タイミング:選任後遅滞なく(明確な期限日数の定めはありませんが、開業前の提出が理想です)

なお、届出は選任後の報告義務であり、選任そのもの(管理権原者による選任行為)とは法的に別の手続きです。選任したら遅滞なく届出を行い、一連の手続きを完了させましょう。飲食店営業許可の申請と並行して進めると、開業前の手続きをまとめて完了できます。

必要書類

  1. 防火管理者選任(解任)届出書(消防署の窓口またはWebサイトで様式を入手)
  2. 防火・防災管理講習修了証の写し(コピーで可)

以上の2点が基本セットです。物件によっては追加書類を求められる場合があるため、管轄消防署に事前確認しておくと安心です。

選任届の記入例——主な項目と書き方サンプル

届出書の各欄に何をどう書けばよいか、具体的な記入サンプルを以下の表にまとめます。様式は消防署によって若干異なる場合がありますが、主要項目はほぼ共通です。

記入欄

記入例・書き方のポイント

防火対象物の用途

飲食店(消防法施行令別表第一(3)項ロ)

防火対象物の所在地・名称

店舗の住所と屋号(例:東京都○○区○○1-2-3 ○○食堂)

管理権原者の氏名・住所

個人事業主はオーナーの氏名と住所、法人は会社名と代表者名

防火管理者の氏名・生年月日

選任する本人の氏名・生年月日(住民票の記載と一致させる)

資格の種別

「甲種」または「乙種」(受講した講習の種別を記載)

修了証番号

講習修了証に記載されている番号(例:第○○○○○号)

選任年月日

実際に選任を決定した日(営業開始前の日付)を記載する

収容人員

算定した収容人員の合計(例:32人)

延べ面積

建物全体の延べ面積を記載するのが通例——不明な場合はビル管理会社や消防署に確認

記入に迷う項目は消防署窓口で直接確認するのが確実です。担当者に「初めて開業する飲食店の選任届を出したい」と伝えれば丁寧に案内してもらえます。

変更・退任時の手続き

防火管理者が変更になった場合(退職・転勤・辞任など)は、前任者の解任と後任者の選任の両方について、速やかに届け出る義務があります。実務上は、多くの消防本部で「防火管理者選任(解任)届出書」1枚により解任と選任を同時に届け出ることができます。

変更が生じたまま届出を怠ると未届出の状態になるため、人事が動いた際は即座に手続きを行いましょう。

未選任・未届出のリスクと罰則

罰則は、未届出と未選任とで適用される規定が異なります。

  • 選任・解任の届出を怠った場合:30万円以下の罰金または拘留(消防法第44条第8号)
  • 消防長等による選任命令(消防法第8条第3項)に違反して選任しなかった場合:6月以下の懲役または50万円以下の罰金(消防法第42条第1項第1号)

実務上の流れとしては、消防署による立入検査で未選任・未届出が発覚した場合、まず是正指導や命令が出され、それでも是正されない場合に刑事罰の対象となるプロセスが進みます。罰則よりも「開業後に消防署から指摘を受けて業務が止まるリスク」のほうが実害として大きいため、開業前に確実に対処しておくことが重要です。

防火管理者を選任したあとに必要となる消防計画の作成・届出も、忘れずに行いましょう。

参考:総務省消防庁「防火管理、消防用設備(防火対策の推進等)


よくある質問(FAQ)

飲食店で防火管理者が必要になるのは何人以上からですか?

建物全体の収容人員が30人以上の場合に選任義務が発生します(30人ちょうども対象)。固定式いす席はいすの数、それ以外の客席部分は床面積÷3㎡で算定し、従業者数を合算します。算定方法の詳細は選任義務の確認セクションをご参照ください。

飲食店の防火管理者は甲種・乙種どちらを取ればよいですか?

建物全体の延べ面積300㎡未満なら乙種300㎡以上なら甲種が必要です。テナントの場合、自店区画の収容人員が30人未満であれば乙種で足りる特例があります。将来の増床を見込む場合は最初から甲種を取得しておくと再取得が不要です。詳細は甲種・乙種の選び方をご確認ください。

防火管理者が不要なケース(免除される条件)は何ですか?

単独店舗で収容人員が29人以下の場合は原則として選任不要です。ただしテナント入居の場合は建物全体の収容人員で判定されるため、自店が29人以下でも選任義務が生じることがあります。入居前にビル管理会社や管轄消防署へ確認してください。詳細はテナント入居時の役割分担をご参照ください。

テナントに入居する飲食店でも防火管理者の選任は必要ですか?

選任義務の有無は建物全体の収容人員で判定され、義務が生じる建物ではすべてのテナント(各管理権原者)に選任義務が生じます。自店区画が30人未満でも選任が必要なケースがあり、その場合は乙種で足りることが多くなります。統括防火管理者が置かれる建物でも、テナント側の選任義務は別に存在します。詳細はテナント入居時の役割分担をご確認ください。

飲食店で防火管理者を選任しなかった場合の罰則は何ですか?

選任・解任の届出を怠った場合は30万円以下の罰金または拘留(消防法第44条第8号)、消防長等の選任命令に違反して選任しなかった場合は6月以下の懲役または50万円以下の罰金(消防法第42条第1項第1号)の対象となります。立入検査で発覚した場合はまず是正指導・命令が出され、従わなければ刑事罰の手続きが進みます。詳細は罰則セクションをご確認ください。

カフェや小規模飲食店の防火管理者に必要な資格は何ですか?

選任義務があり、かつ建物全体の延べ面積が300㎡未満であれば、乙種防火管理者(1日間の講習・修了時に効果測定あり)で対応できます。単独店舗で収容人員29人以下なら資格は不要です。詳細は甲種・乙種の選び方をご確認ください。

防火管理者の資格(講習修了証)は全国どこでも有効ですか?

全国で有効です。消防法施行令第3条に基づく全国共通の資格であり、取得した都道府県に関わらず、日本全国の防火対象物で使用できます。他県で受講した修了証を持つ人が別の地域の店舗の防火管理者に選任されることも問題ありません。講習の申込み方法は資格・講習セクションをご確認ください。

選任届はいつまでに・どこへ提出すればよいですか?

選任後遅滞なく提出します。法令上の届出先は消防長又は消防署長で、実務上は店舗を管轄する消防署の予防課などの窓口に提出します。明確な日数制限はありませんが、開業前の提出完了が理想です。提出手順と必要書類は選任届セクションでご確認ください。

飲食店の防火管理者はオーナーが兼任できますか?店長でも問題ありませんか?

いずれも適法です。講習修了証を保有していれば、オーナーの兼任も店長の選任も問題ありません。ただし防火管理者には管理的または監督的な地位が求められるため、権限のないアルバイトスタッフなどは選任できません。従業員を選任した場合は、退職・異動の際に解任と新たな選任の届出が必要です。詳細はテナント・兼任の取り扱いをご確認ください。

防火管理者の資格取得にかかる費用と日数はどのくらいですか?

一般財団法人 日本防火・防災協会の実施分で甲種は8,000円・2日間、乙種は7,000円・1日間(いずれも修了時に効果測定あり・テキスト代込み)が目安です。東京都など消防機関が講習を実施する地域では料金が異なります。開業日の1〜2ヵ月前には受講を完了できるよう、早めに予約を入れておきましょう。詳細は資格・講習セクションでご確認ください。


本記事の金額・制度情報は執筆時点の目安です。実際の費用は業態・規模・地域・時期により異なり、補助金・融資・許認可・税の最新かつ正確な情報・要件は各公式(日本政策金融公庫・中小企業庁・各自治体・税務署等)で必ずご確認ください。


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