深夜0時以降にお酒を提供する飲食店は、風営法に基づき所轄警察署への「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」が義務付けられています。届出の対象要件・必要書類・図面の作成方法・費用・提出フロー・届出後の標識掲示義務・無届け営業の罰則リスクまで、初めてのオーナーが自力で手続きを完結できるよう実践的に解説します。

深夜にお酒を提供するバーや居酒屋を開業する際、多くのオーナーが「何か許可が必要なのでは?」と感じます。実際に必要な手続きは「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」です。根拠法は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)第33条です。
重要なのは、これが「許可」ではなく「届出」である点です。行政機関による審査や許可証の交付はなく、営業開始予定日の10日前までに必要書類を所轄警察署(公安委員会への経由窓口)に提出すれば、予定日から営業を開始できます。ただし、届出をせずに営業を始めることは違法となるため、開業前に必ず手続きを完了させなければなりません。
届出が義務となる要件は以下の2点です。
バー・ショットバー・居酒屋など、深夜0時を超えて酒類を提供する飲食店は、原則としてこの届出の対象となります。ただし重要な例外として、「営業の常態として、通常主食と認められる食事(米飯類・めん類・パン類等)を提供して営む営業」は風営法上の酒類提供飲食店営業から除外されています。つまり、深夜に酒類を提供していても、主食を常態的に提供するラーメン店・牛丼店・定食屋・レストランなどは届出が不要です。また、深夜0時までに閉店する店舗や、酒類を提供しない飲食店も届出は不要です。
また、物件選定の段階で必ず確認すべき重要事項があります。風営法第33条第4項の委任を受けた各都道府県の条例(風営法施行条例)により、住居集合地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域など)では深夜酒類提供営業が禁止されています。禁止される地域の範囲や例外は都道府県ごとに異なり、たとえば東京都条例では、第二種住居地域・準住居地域のうち商業地域・近隣商業地域の周囲おおむね20メートル以内の区域などは禁止の対象から除外されています。どれほど内装に投資しても、所在地が禁止地域であれば営業はできません。物件契約前に必ず都道府県条例と用途地域を確認してください。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出と混同されやすいのが、風営法1号に基づく「風俗営業許可」です。両者の分岐点は「接待行為の有無」です。
接待行為とは、特定の客に対してホステスが席に着いてお酌をする、談笑・歌唱の相手をするなど、歓楽的雰囲気を醸し出す方法で客をもてなす行為を指します。このような接待行為を行う場合は、深夜酒類提供飲食店の届出ではなく、公安委員会への風俗営業許可申請が必要になります。
比較項目 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 風俗営業許可(1号) |
|---|---|---|
手続き種別 | 届出(審査・許可証交付なし) | 許可申請(審査あり) |
審査期間 | なし(予定日の10日前までに提出) | 標準処理期間55日程度(都道府県により異なる) |
接待行為 | 不可 | 可 |
深夜営業 | 可 | 原則不可(深夜0時まで。条例指定地域では午前1時までの例外あり) |
深夜0時以降も接待なしでお酒を提供するスタイルなら届出、接待を伴うキャバクラやクラブなら風俗営業許可、というシンプルな判断基準で業態を整理してください。
ダイニングバーは、食事と酒類を同時に提供する業態です。届出の要否は「主食と認められる食事を営業の常態として提供しているかどうか」で判断が分かれます。米飯類・めん類などの主食を常態的に提供している店舗であれば届出不要となる可能性がありますが、酒類提供が主体でつまみ程度の食事しか出さない場合は届出が必要です。判断に迷う場合は、メニュー構成や営業実態を所轄警察署に説明して確認することをおすすめします。
カラオケ設備を備える店舗については、営業の態様によって扱いが変わる可能性があります。「深夜に客に遊興をさせ、かつ酒類を提供する飲食店営業」は「特定遊興飲食店営業」として別途許可が必要になります。たとえば、カラオケで客に歌唱を積極的に勧奨するなど「遊興をさせる」態様が深夜営業・酒類提供と重なる場合は、特定遊興飲食店営業に該当すると判断されるケースがあります。カラオケ設備を導入する際は、事前に所轄警察署に業態の実態を説明して確認することを強くおすすめします。
用途地域の制限については、「商業地域」「近隣商業地域」「準工業地域」などでは深夜酒類提供営業が認められているのが一般的です。一方、住居集合地域での営業は都道府県条例により禁止されています。なお、用途地域は不動産の登記事項証明書には記載されませんので、市区町村の都市計画課窓口や都市計画図、自治体の都市計画情報Webサービスで確認したうえで契約を進めてください。
届出に必要な書類は都道府県によって書式や添付書類が異なります。まず所轄警察署の窓口に出向くか、都道府県警察の公式ウェブサイトから届出書の書式を取得するところから準備を始めてください。東京であれば警視庁、大阪であれば大阪府警のウェブサイトに様式が掲載されています。書式を入手する前に書類を自己流で作成してしまうと、後で一から作り直す手間が生じます。
以下が一般的な提出書類の一覧です。都道府県によって追加書類が求められる場合がありますので、所轄警察署で最新情報を確認してください。
よくある不備として、住民票は「本籍地記載あり・マイナンバー記載なし」の指定が多い点が挙げられます。コンビニ交付や市区町村の窓口で取得する際に、必ず記載内容の指定を確認してください。法人の登記事項証明書の発行期限については公式に明記されていない場合が多いため、発行から3か月以内を目安としつつ、所轄警察署に確認するのが安全です。
届出書の主な記載事項は次のとおりです。
初心者が特に注意すべき点が「営業開始予定日」の記載です。風営法(施行規則)上、届出は営業開始の10日前までに提出する必要があります。つまり、届出書には提出日よりも10日以上後の日付を営業開始予定日として記載しなければなりません。提出当日の日付や翌日の日付を書いてしまうケースが多いため、開業日から逆算して提出スケジュールを組んでください。
営業時間の記載については「深夜0時〜午前6時」のように具体的な時刻を記入します。深夜帯のみを記載するのではなく、昼間からの通し営業の場合は全体の営業時間を記載する形式を取る自治体もあります。書式ごとに記入例が異なるため、様式に付属の記載例を必ず参照してください。
手書きの図面でも受理されるのが一般的です。法令上、図面の作成方法や縮尺の指定はなく、CADソフトや専門的な作図ツールは必須ではありません。方眼紙を使って縮尺1/50〜1/100程度で丁寧に描けば受理されるケースが多いですが、要求水準は警察署により異なるため、事前相談で確認しておくと安心です。
平面図に記載しなければならない項目は以下のとおりです。
よくある誤りが「見取り図(イメージ図)と平面図を混同すること」です。見取り図はおおまかな配置を示したものですが、届出に必要なのは各部の正確な寸法が入った平面図です。内装工事後に実測してから作成することをおすすめします。
求積図は平面図をもとに、各室の幅×奥行きの計算式を記載して合計床面積を算出するものです。複雑な形状の部屋は台形や三角形に分割して計算してください。
図面の作成に不安がある場合は、提出前に警察署の窓口で事前相談を行うことが最も効果的な不備防止策です。多くの警察署では図面の下書きを持参しての事前確認に応じており、窓口担当者が記載漏れや誤りを指摘してくれます。
届出書類が整ったら、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課(都道府県によって「保安係」「風俗係」など名称が異なる場合があります)に提出します。法律上の届出先は公安委員会であり、警察署はその経由窓口にあたります。窓口への直接持参が基本ですが、受付方法は都道府県警察により異なり、電子申請に対応している地域もあるため、事前に所轄警察署に確認してください。
提出タイミングは法令上営業開始の10日前までですが、実務上は図面の修正や追加書類の提出依頼に対応できるよう、営業開始の2〜3週間前に提出することをおすすめします。
提出から営業開始までの流れを時系列で整理すると次のようになります。
届出制であるため、許可のような審査や許可証の交付はありません。予定日の10日前までに適法に届出を済ませていれば、予定日から営業を開始できます。
開業日から逆算すると、開業3〜4週間前には書類の準備を始めるのが理想的です。内装工事が完成してから実測・図面作成が始まるため、工事の進捗と並行してスケジュールを組んでください。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出にかかる費用は、自己申請の場合手数料ゼロ円です。収入印紙も不要で、住民票の取得費用(数百円)や図面作成のための文具代程度しかかかりません。
行政書士に代行を依頼する場合の費用は、書類作成・図面作成込みでおおむね3〜8万円程度が目安です。図面の難易度や物件の形状、地域によって変動し、複雑な案件では10万円前後になる例もあります。
比較項目 | 自己申請 | 行政書士代行 |
|---|---|---|
費用 | ほぼ0円(実費のみ) | おおむね3〜8万円程度(難易度・地域により変動) |
所要時間(準備) | 数日〜1週間程度 | 依頼後1〜2週間程度 |
図面作成 | 自分で作成 | 代行してもらえる |
難易度 | 中程度(事前相談で解消可) | 低い |
向いているオーナー | 時間に余裕がある・費用を抑えたい | 開業準備で多忙・複雑な物件形状 |
行政書士に依頼する場合は、行政書士証票や都道府県会への登録を確認し、複数の事務所から見積もりを取ることをおすすめします。また、深夜酒類提供飲食店の届出実績が豊富な行政書士を選ぶと、図面の精度や書類の精度が高まります。
届出が済めば手続きは完了ではありません。届出後も継続的に守るべき義務があり、これを怠ると罰則の対象となります。
深夜酒類提供飲食店営業の届出に対しては、風俗営業のような許可証や標識は交付されません。風営法上、店内に「届出済み」の標識を掲示する義務も定められていません(酒類の小売業者に課される「酒類販売管理者標識」は酒税法関連の別制度であり、飲食店の店内提供には適用されません)。
届出後に実務上重要なのは、次の2点です。
なお、深夜営業の飲食店には、風営法に基づく営業所内の照度維持や騒音・振動の規制、年少者の立入りに関する規制などの遵守事項もあります。届出をして終わりではなく、営業中も継続して守るべきルールがある点に留意してください。
深夜酒類提供飲食店の届出をせずに深夜0時以降に酒類を提供して営業した場合、風営法第54条の規定により50万円以下の罰金が科せられます。あわせて、公安委員会による指示や、6か月以内の営業停止命令(風営法第34条)の対象にもなり得ます。営業停止命令を受ければ、事実上の営業停止に追い込まれることになります。
摘発のきっかけとして多いのは、近隣住民からの通報と警察による立入検査です。深夜帯の飲食店は騒音・喫煙・来店客のマナーなどで近隣とトラブルになりやすく、通報から調査・摘発につながるケースが実際に報告されています。
「届出のことを知らなかった」という主張は、罰則の適用を免れる理由にはなりません。手続きそのものは難しくありませんが、知らなかったでは済まないというのが法的実態です。
深夜酒類提供飲食店を廃業する場合、廃止の日から10日以内に廃止届を所轄警察署に提出する義務があります。また、深夜酒類提供営業を取りやめて昼営業のみに業態変更する場合も、同様に廃止届の提出が必要です。
届出内容(営業所の名称・所在地・営業時間・床面積等)を変更する場合は、変更のあった日から10日以内に変更届を提出します。ただし、法人の名称・住所・代表者氏名の変更については20日以内とされている点に注意してください。軽微な内装変更であっても、床面積や構造に変更が生じた場合は届出が必要となる場合があるため、工事前に所轄警察署に確認してください。
廃止届の提出を怠ると、それ自体が義務違反となるほか、行政記録上は「営業中」のステータスが継続するため、別業態での新規届出など後続の手続きの際に整理が必要になることがあります。廃業時は忘れずに手続きを行ってください。
深夜(午前0時〜午前6時)に客へ酒類を提供して営業する飲食店が、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第33条に基づき、所轄警察署を経由して公安委員会に提出する届出です。許可制ではないため行政審査や許可証の交付はなく、営業開始予定日の10日前までに届出を済ませれば予定日から営業できます。届出をせずに営業すると50万円以下の罰金の対象となります。
深夜0時以降に酒類を提供して飲食させる飲食店は原則として届出が必要ですが、営業の常態として主食(米飯類・めん類・パン類等)を提供する営業は対象から除外されます。たとえばラーメン店や牛丼店、定食屋などは深夜に酒類を出していても届出不要です。バーや居酒屋など酒類提供が主体の業態は届出が必要です。なお、接待行為を行う場合は届出ではなく風俗営業許可が必要になり、都道府県条例で禁止された住居集合地域では深夜酒類提供営業自体ができません。
自己申請の場合、手数料は無料で収入印紙も不要です。住民票取得費など実費のみで手続きできます。行政書士に代行を依頼する場合は、書類作成・図面作成込みでおおむね3〜8万円程度が目安で、図面の難易度や地域により変動します。費用を抑えたい場合は自己申請が有効ですが、物件の形状が複雑な場合や開業準備で多忙な場合は代行も選択肢となります。
主な必要書類は、①営業開始届出書、②営業の方法を記載した書類(法定の必須添付書類)、③平面図、④求積図、⑤建物・敷地の配置図、⑥住民票(個人の場合)、⑦登記事項証明書・定款・役員全員の住民票(法人の場合)です。このほか従業員名簿やメニュー等の提出を求められる場合もあります。書式や添付書類の種類は都道府県によって異なるため、所轄警察署または都道府県警察のウェブサイトで確認してから準備を始めてください。
手書きで作成した図面でも受理されるのが一般的です。法令上の縮尺指定はありませんが、縮尺1/50〜1/100程度の方眼紙を使用し、各室の名称・寸法・出入口・照明位置・設備配置を記載した平面図と、床面積の計算を示した求積図を用意するのが実務上の標準です。「見取り図」ではなく寸法入りの平面図が求められる点に注意してください。要求水準は警察署により異なるため、提出前に窓口で事前相談を行うと、図面の不備を事前に修正できます。
営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課に提出します(法律上の届出先は公安委員会で、警察署は経由窓口です)。都道府県によって「保安係」「風俗係」など担当部署の名称が異なる場合があるため、事前に電話で確認してから訪問することをおすすめします。窓口への持参が基本ですが、受付方法は都道府県警察により異なるため、あわせて確認してください。
風営法第33条第4項の委任を受けた各都道府県の条例により、住居集合地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域など)では深夜酒類提供営業が禁止されています。禁止範囲や例外は都道府県ごとに異なり、たとえば東京都では商業地域・近隣商業地域の周囲おおむね20メートル以内の一部区域が除外されます。商業地域・近隣商業地域・準工業地域などでは認められているのが一般的です。物件契約前に市区町村の都市計画窓口や都市計画図で用途地域を確認し、都道府県条例の規定と照らし合わせることが必須です。
風営法第54条の規定により50万円以下の罰金が科せられます。さらに、公安委員会による指示や6か月以内の営業停止命令(風営法第34条)の対象となるリスクもあります。近隣からの通報や警察による立入検査によって発覚するケースが実際にあるため、「知らなかった」という主張は通じません。開業前に必ず届出を完了させてください。
深夜酒類提供飲食店営業の届出に対して許可証や標識は交付されず、風営法上、標識の掲示義務も定められていません。実務上は、受付印のある届出書の控えを保管しておき、警察の立入時などに提示できるようにしておくことが重要です。なお、酒類の小売業者に義務づけられる「酒類販売管理者標識」は別制度であり、飲食店の店内での酒類提供には適用されません。
廃業または深夜酒類提供営業を終了する業態変更を行った場合、廃止の日から10日以内に廃止届を所轄警察署に提出する義務があります。届出内容(営業所名称・営業時間・床面積等)を変更する際は変更のあった日から10日以内に変更届が必要です(法人の名称・住所・代表者氏名の変更は20日以内)。廃止届の不提出はそれ自体が義務違反となり、行政記録上「営業中」が継続してしまうため、確実に手続きを行ってください。
本記事の金額・制度情報は執筆時点の目安です。実際の費用は業態・規模・地域・時期により異なり、補助金・融資・許認可・税の最新かつ正確な情報・要件は各公式(日本政策金融公庫・中小企業庁・各自治体・税務署等)で必ずご確認ください。
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