バー・スナック・ガールズバー・コンカフェなど接待を伴う飲食店や照度10ルクス以下の店舗には風俗営業許可(風営法1号)の取得が必要です。社交飲食店の定義・業態別判定から、警察署への申請書類・手順・費用・審査期間・許可後の営業時間制限・無許可営業の罰則まで、開業前に必要な実務情報を一気通貫で解説します。

バーやスナックを開業しようとしているとき、「風俗営業許可が必要かどうか」という判断に迷うオーナーは少なくありません。結論から言えば、「接待行為がある」飲食店は風営法上の社交飲食店(1号営業)に該当し、「接待行為はないが客室の照度が10ルクス以下」の飲食店は2号営業に該当します。いずれも警察署への風俗営業許可申請が必要です。
どちらも「風俗営業」として風営法の許可取得が義務付けられている点は共通です。この二つを混同すると自店の該当区分を誤って判断するおそれがあるため、まず「接待の有無」と「照度の水準」の二つの軸で自店を確認してください。
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第2条第1項第1号は、「キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」を1号営業と定義しています(e-Gov 風営法第2条)。
ここで言う接待行為とは、単純な注文取りや料理の提供ではありません。具体的には次のような行為が該当します。
接待もなく照度も十分確保されているいわゆる「立ち飲みバー」や「居酒屋」であれば、通常の飲食店営業許可(食品衛生法)だけで開業できます。自店が当てはまるかどうか、まず「接待の有無」と「照度」の二軸で照らし合わせてください。
読者が開業を検討しやすい代表的な業態を、「接待行為の有無」と「照度条件」の観点で整理します。
スナック・ラウンジ:ホステスやキャストが客席に同席し、会話・お酌・カラオケで接客するスタイルは、接待行為の典型例です。ほぼすべてのケースで1号営業に該当し、風俗営業許可の取得が必須です。
ガールズバー:カウンター越しにスタッフが接客し、客の隣には座らないスタイルであれば接待行為なしと判断されるため、原則として許可は不要です。ただし、カウンター内のスタッフが席外に出て客の隣に着席したり、特定の客への継続的な密着接客が行われている場合は、実態として1号営業に該当すると判断される可能性があります。業態名ではなく実際の接客内容で判定されます。
コンカフェ(コンセプトカフェ):衣装・世界観・キャスト制を特徴とする業態ですが、キャストが客席に同席してサービスをする運営スタイルであれば1号営業と判定されます。メイドカフェ形式でも、スタッフが客の隣に座り継続的にサービスを提供するなら許可が必要です。コンカフェはグレーゾーンが多い業態であり、「うちは大丈夫だろう」という自己判断は危険です。
グレーゾーンに悩む場合の最善策は、物件契約前に管轄警察署の生活安全課へ事前相談することです。開業後に無許可営業と判断されるリスクを防ぐためにも、早期の確認を強くお勧めします(参考:警視庁「風俗営業」)。
多くの開業希望者が混同しがちなポイントです。この二つは根拠法も申請先も異なる、完全に別々の許可です。
| 飲食店営業許可 | 社交飲食店営業許可 |
|---|---|---|
根拠法 | 食品衛生法 | 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法) |
申請窓口 | 店舗所在地の保健所 | 店舗所在地を管轄する警察署 |
主な確認事項 | 厨房設備・衛生管理 | 接待行為の有無・構造設備・立地 |
社交飲食店を開業するには、両方の許可を取得しなければ営業を開始できません。保健所の許可は食品・衛生面を、警察署の許可は風俗面を管轄しており、どちらかが欠けても違法営業となります。
スケジュール面では、保健所への申請(内装完成後の検査を要する)と警察署への風営法申請は並行して進めるのが一般的です。どちらも審査に一定の期間がかかるため、余裕を持った開業計画が不可欠です。飲食店営業許可(食品衛生法)の申請手順については別記事で詳しく解説しています。
飲食店オーナーが理解しておくべき風営法の許可(風俗営業)の種類一覧を以下の表に整理します。「風営法 許可 一覧」として参照できるよう、号数・業態・代表例をまとめました。自店がどの区分に当たるかを確認するための基準表としてご活用ください。
号数 | 業態 | 代表例 |
|---|---|---|
1号 | 接待あり飲食店(社交飲食店) | スナック・キャバクラ・ラウンジ |
2号 | 低照度(10ルクス以下)飲食店 | 雰囲気重視の薄暗いバー(接待なし) |
3号 | 区画席飲食店(他から見通すことが困難で、広さ5㎡以下の区画席で飲食をさせる営業) | 個室型のネットカフェ等 |
4号 | 設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 | マージャン店・パチンコ店 |
5号 | 遊技設備を設置して客に遊技をさせる営業(4号を除く) | ゲームセンター(スロットマシン・テレビゲーム機等の設置店) |
飲食業態のオーナーが主に意識すべきは1号と2号で、個室区画を設ける業態では3号にも注意が必要です。4号・5号はマージャン店・パチンコ店・ゲームセンターなどの遊技施設に関わるもので、純粋な飲食店には通常関係しません。なお、テレフォンクラブは風俗営業(1〜5号)ではなく「店舗型電話異性紹介営業」という届出制の別カテゴリーに分類されます。自店の照明設計や接客スタイルに応じて、どの区分に該当するかを確認してください(参考:警視庁「風俗営業等業種一覧」)。
社交飲食店の風俗営業許可申請は、大きく5つのステップで進みます。全体像を把握してから各手続きに入ることで、書類不備や手戻りを防げます。
申請窓口は店舗所在地を管轄する警察署の生活安全課(生活安全係)です。都道府県や警察署によって呼称が異なる場合があるため、事前に電話で確認することをお勧めします。
申請前に必ず確認しなければならないのが立地規制です。風営法は、学校・病院・図書館・児童福祉施設などの「保護対象施設」から一定の距離を置かない場所では風俗営業を認めていません。この距離(保護距離)は用途地域によって異なり、商業地域では比較的緩やかな一方、住居系用途地域では厳しく設定されています。具体的な距離は各都道府県の条例で定められているため、必ず店舗所在地の都道府県の基準を確認してください。用途地域と保護距離の詳細については物件選びと用途地域の解説記事もあわせてご確認ください。
保護距離を満たさない物件ではたとえ内装が完成していても許可は下りません。物件契約前に管轄警察署へ「この場所で1号営業の申請は可能か」を確認することが、最大のリスク回避策です。物件選びの段階から立地規制を意識してください。
1号営業の許可申請に必要な主な書類は以下の8点です。
このほか、営業所ごとに選任する管理者に関する書類(誓約書・写真等)も必要になります。
住民票と身分証明書は別書類です。「身分証明書」は運転免許証やマイナンバーカードではなく、本籍地の市区町村が発行する公的証明書(成年被後見人・被保佐人・破産者でないことを証明)を指します。混同しやすいため注意してください。申請書類の詳細は警視庁のHPで確認できます。
申請書の記載で特に注意が必要な箇所は「接待行為の内容」と「営業所の構造設備」です。
接待行為の記述は、曖昧にせず具体的に書く必要があります。「ホステスが客席に同席し会話・お酌を行う」のように、実際の営業スタイルを正確に記載してください。実態と申請内容が乖離していると、後の立入検査で問題になります。
平面図では次の要素が審査のポイントになります。
審査期間の目安は標準処理期間55日程度(都道府県によって異なります)です。この55日は土日祝日等を除いた日数であり、実日数では約2.5〜3か月に相当します。立入検査が入る場合は追加日数が発生することもあります。書類不備による差し戻しは審査期間を大幅に延ばす原因になるため、提出前に警察署窓口で事前確認を受けることを強くお勧めします。
風俗営業許可の取得は開業のゴールではありません。許可取得後も複数の制約が継続的に課され、それを守り続けることが法令遵守の本質です。費用と制約の両面を正確に把握したうえで開業計画を立ててください。
費用は大きく「①申請手数料」と「②専門家報酬」に分かれます。
①申請手数料:全国的な目安として約24,000円です。納付方法は都道府県によって異なり、多くの道府県では収入証紙による納付ですが、東京都のように収入証紙制度を廃止して現金等で納付する地域もあります。納付方法は申請先の警察署または都道府県警察のHPで確認してください。
②行政書士報酬:書類作成・平面図作成・測量・申請代行をすべて依頼した場合、20〜40万円程度が相場です。地域や物件の複雑さによって変動します。
自力申請は不可能ではありませんが、1号申請は書類数が多く、平面図・求積図の作成には専門的な知識が求められます。書類不備による差し戻しや審査の長期化を考慮すると、初めての開業では行政書士への依頼を検討する価値は十分あります。
風営法に精通した行政書士を探す際は、日本行政書士会連合会の会員検索や各都道府県行政書士会のHPが窓口になります。東京・大阪・神奈川・千葉など主要都市では風営法専門の事務所も複数存在します。特に東京で探す場合は、東京都行政書士会のHPの会員検索機能で取扱業務(許認可・風営法関連など)を手がかりに絞り込むことで、実績のある事務所を効率よく見つけられます。また、申請先となる管轄警察署の近隣エリアに事務所を構える行政書士は現地の審査傾向に詳しいことが多いため、申請先警察署の所在地周辺で検索するのも有効な方法です。
風俗営業(1号)の許可を取得した場合、深夜0時(条例による特定地域では深夜1時)以降の営業は原則として禁止されています。
地域区分 | 営業終了時間 |
|---|---|
一般地域 | 深夜0時(午前0時) |
特定地域(都道府県条例で指定) | 深夜1時(午前1時) |
「深夜0時以降も営業したい」という場合、深夜酒類提供飲食店営業届という別の制度があります。手続きの詳細は深夜酒類提供飲食店営業届の解説記事をご覧ください。ただしこの届出を選択した場合、接待行為は一切できません。つまり「接待あり+深夜0時以降の営業」は風営法上、両立できない仕組みになっています。深夜まで営業したいなら接待なし・照度十分のスタイルに業態を変える必要があり、この点は開業コンセプト設計の段階で慎重に検討すべきトレードオフです。
許可証に有効期限はなく、定期更新の手続きは不要です。ただし、以下の変更が生じた場合は変更届の提出または再申請が必要になります。
許可取得後の主な制約(デメリット)を整理すると、次のとおりです。
そして最も重大なリスクが無許可営業の罰則です。2025年6月28日に施行された改正風営法により罰則は大幅に強化され、無許可で風俗営業を行った者には5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科が科されます。法人に対する罰金(両罰規定)も3億円以下に引き上げられています(e-Gov 風営法)。「業態がグレーだから大丈夫だろう」「知らなかった」は法的に通用しません。開業前の業態確認と早期の許可申請が、事業を守る最善の手段です。
Q1. 社交飲食店とはどのような店のことですか?どこまでが対象になりますか? 風営法第2条第1項第1号に定める「設備を設けて客の接待をして客に飲食させる営業」を指します。接待行為(客の隣に同席しての会話・お酌・歌唱の提供など)がある飲食店が1号営業(社交飲食店)の対象です。接待はないが客室の照度が10ルクス以下の飲食店は2号営業として別途許可が必要になります。業態名ではなく実際の接客内容と照度で判定される点が重要です。詳しくは「社交飲食店とは?許可が必要な店舗の条件と業態別判定」をご覧ください。
Q2. ガールズバー・スナック・コンカフェは風俗営業許可が必要ですか? スナック・ラウンジはほぼ必須です。ガールズバーはカウンター越しの接客のみなら原則不要ですが、スタッフが客席に出て隣に着席する行為があれば対象になります。コンカフェはキャストが客席に同席するスタイルなら1号判定になり得るため、管轄警察署への事前相談で確認してください。業態別の詳細な判定基準は「ガールズバー・スナック・コンカフェ・ラウンジの業態別判定基準」をご覧ください。
Q3. 風営法の1号から5号までの違いは何ですか? 1号は接待あり飲食(社交飲食店)、2号は接待なしで照度10ルクス以下の飲食店、3号は他から見通すことが困難な5㎡以下の区画席で飲食をさせる区画席飲食店です。4号はマージャン店・パチンコ店など設備を設けて射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業、5号はゲームセンターなど遊技設備を設置する営業(4号を除く)を指します。4号・5号は飲食業態には通常関係しないため、飲食店オーナーが主に意識すべきは1号〜3号です。各号の詳細は「風営法の号数体系:1号から5号までの違い」の一覧表でご確認ください。
Q4. 風俗営業許可の申請はどこ(警察署の何課)に行えばよいですか? 店舗所在地を管轄する警察署の生活安全課(生活安全係)が窓口です。都道府県・警察署によって担当課の名称が異なる場合があるため、事前に電話で確認することをお勧めします。申請前の立地確認も含めた詳細は「申請窓口と申請前に確認すべき立地条件」をご覧ください。
Q5. 申請に必要な書類は何ですか?どうやって揃えますか? 主な書類は①許可申請書②営業所の平面図・求積図③賃貸借契約書④住民票⑤身分証明書(本籍地発行)⑥法人は登記事項証明書⑦営業の方法を記載した書類⑧都道府県指定の書類の8点で、このほか管理者に関する書類(誓約書・写真等)も必要です。申請書は警察署またはHPで入手、住民票は市区町村窓口・コンビニ、身分証明書は本籍地の市区町村窓口で取得できます。書類ごとの取得方法の詳細は「必要書類一覧と取得方法」をご覧ください。
Q6. 許可が下りるまでにどのくらいの期間がかかりますか? 標準処理期間は約55日(都道府県により異なる)が目安です。ただしこれは土日祝日等を除いた日数で、実日数では約2.5〜3か月に相当します。立入検査の日程調整や書類不備による差し戻しがあると、さらに日数がかかります。開業日の少なくとも3か月前には申請できるよう、スケジュールに余裕を持つことを推奨します。審査の詳細は「申請書の書き方のポイントと審査期間」をご覧ください。
Q7. 風俗営業許可の取得にかかる費用はいくらですか? 申請手数料は約24,000円が目安です。納付方法は都道府県により異なり、収入証紙または現金等で納付します(東京都は現金等)。行政書士に書類作成・申請代行を依頼する場合は20〜40万円程度が相場で、物件や業態の複雑さによって変動します。費用の内訳と行政書士選びの方法は「申請費用の内訳と行政書士への依頼判断」をご覧ください。
Q8. 行政書士に頼まず自分で申請することはできますか? 自力申請は可能ですが、1号申請は書類数が多く平面図・求積図の作成が必要で、難易度は高めです。書類不備による差し戻しが発生すると審査期間が延びるため、初めての開業では行政書士への相談を検討する価値があります。日本行政書士会連合会や東京都行政書士会の会員検索で風営法に詳しい行政書士を探せます。依頼判断の基準については「申請費用の内訳と行政書士への依頼判断」をご覧ください。
Q9. 風俗営業許可を取ると営業時間はどう制限されますか?深夜営業はできなくなりますか? 1号営業は深夜0時(条例の特定地域は1時)以降の営業が禁止されます。深夜0時以降も営業したい場合は深夜酒類提供飲食店営業届を選ぶ方法がありますが、その場合は接待行為が一切できなくなります。「接待あり+深夜0時以降の営業」は風営法上、両立できません。詳細は「許可後の営業時間制限と深夜営業」をご覧ください。
Q10. 飲食店営業許可証と社交飲食店営業許可証は何が違いますか?両方必要ですか? 前者は食品衛生法に基づき保健所が管轄し、後者は風営法に基づき警察署が管轄します。根拠法も申請先も異なる別個の許可であり、社交飲食店を営業するには両方の取得が必須です。どちらか一方が欠けても開業できません。二つの許可の違いと取得順序の目安は「飲食店営業許可証と社交飲食店営業許可証の違い:両方必要な理由」をご覧ください。
Q11. 許可証に有効期限はありますか?更新手続きはどうすればよいですか? 風俗営業許可証に有効期限はなく、定期的な更新手続きは不要です。ただし、移転・名義変更・内装の構造変更などの際は変更届の提出または再申請が必要になるため、変更前に管轄警察署へ確認してください。変更届が必要なケースの詳細は「許可証の維持管理・取得のデメリット・無許可営業の罰則」をご覧ください。
Q12. 風俗営業許可を取るデメリットや、取ると生じる規制には何がありますか? 主なデメリットは①深夜0時以降の営業禁止②保護対象施設付近への立地不可③広告・接客表現への規制④従業者名簿等の帳簿管理・立入検査への対応義務の4点です。開業後も継続的な法令遵守が求められる点を踏まえ、開業前にこれらの制約を織り込んだ事業計画を立てることが重要です。制約の詳細は「許可証の維持管理・取得のデメリット・無許可営業の罰則」をご覧ください。
Q13. 無許可で営業した場合の罰則はどうなりますか? 2025年6月28日施行の改正風営法により、無許可営業には5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科が科される可能性があります。法人の場合は両罰規定により3億円以下の罰金が科されることもあります。「知らなかった」「グレーだと思っていた」は免責になりません。業態が1号営業に該当するかどうかは、開業前に必ず管轄警察署へ確認してください。罰則規定の詳細は「許可証の維持管理・取得のデメリット・無許可営業の罰則」をご覧ください。
本記事の金額・制度情報は執筆時点の目安です。実際の費用は業態・規模・地域・時期により異なり、補助金・融資・許認可・税の最新かつ正確な情報・要件は各公式(日本政策金融公庫・中小企業庁・各自治体・税務署等)で必ずご確認ください。
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