飲食店開業における物件選びの重要性
飲食店を開業するにあたって、最も重要な決断の一つが「物件選び」です。良い立地と適切な物件は開業後の集客や売上に直結するため、慎重に選ぶ必要があります。物件探しは、面積、立地、賃料、設備の面から検討しましょう。店舗コンセプトに合った物を選ぶことが重要です。店は簡単に移転できませんので、物件選びは慎重に行いましょう。
本記事では、飲食店開業時の物件探しに焦点を当て、成功につながる物件の選び方から内覧時のポイントまで詳しく解説します。
物件選びが飲食店の成否を決める理由
飲食店は立地に大きく左右されるビジネスです。いくら料理やサービスが素晴らしくても、お客様が来店しにくい場所では厳しい戦いを強いられます。適切な物件を選ぶことは、開業後の経営を大きく左右する重要な要素なのです。
物件探しを始める前の準備
店舗コンセプトの明確化
まず店舗コンセプトを明確にしましょう。店舗コンセプトとは、どんなお客様に何の商品・サービスをどのように提供するか、をまとめたものです。ターゲットとする客層や商品・サービス、店の雰囲気によって、適した店舗物件は異なります。
例えば、ファミリー層をターゲットにするなら住宅街の近く、ビジネスパーソンをターゲットにするならオフィス街など、ターゲットによって最適な立地は変わってきます。
資金計画の立案
物件には様々なタイプがあり、それぞれ初期費用や運営コストが異なります。資金計画を立てる際には、以下の費用を考慮しましょう:
- 賃貸契約費用(敷金・礼金・保証金など)
- 内装工事費
- 厨房設備費
- 家具・備品費
- 運転資金(最低でも3〜6ヶ月分)
特に初期費用は物件タイプによって大きく変わるため、予算に合った物件選びが重要です。
立地選びのポイント
商圏分析の基本
商圏の人口動態や消費動向はどうですか?競合他店の有無と規模、美容室は周辺にありますか?どのような店ですか?最寄り駅から10分くらいですね。住宅地にさしかかるくらいの場所ですか?...住宅地の中であれば、主婦がターゲットになります。世帯年収によって価格設定も変わってきます。学校や会社などがあれば、学生やOLがターゲットになります。校風や社風によって、商品メニューが変わってきます。
商圏を分析する際には、以下のポイントを確認しましょう:
- 周辺の人口密度と年齢層
- 昼間人口と夜間人口の違い
- 競合店の数と種類
- 通行量(平日・休日、時間帯別)
- 周辺施設(オフィス、学校、住宅など)
人通りと視認性
飲食店は人の目に留まりやすいことが重要です。特に新規開業の場合、視認性の高い場所を選ぶことでオープン直後から集客につながります。
周辺環境では、最寄り駅からの人通りはどうか、街灯が少なくないかなども確認しましょう。物件の内見は昼に行うことが多いですが、昼は人通りが多くても夜になると雰囲気が変わることもあります。「暗くて不安を感じる」、「治安が気になる」ということもあるかもしれません。気に入った物件が見つかったら、できれば夜の様子も確認しておきましょう。
特に夜営業がメインの居酒屋などは、夜の雰囲気や人通りを確認することが非常に重要です。
立地と業態の相性
業態によって最適な立地は異なります。例えば:
- カフェ:オフィス街、商業施設内、大学周辺
- 居酒屋:駅前、オフィス街の近く
- 家族向けレストラン:住宅地、ショッピングモール内
- ラーメン店:駅前、繁華街、深夜人通りのある場所
自分の業態に最適な立地を選ぶことが成功への第一歩です。
居抜き物件とスケルトン物件の比較
飲食店の物件には大きく分けて「居抜き物件」と「白紙(スケルトン)物件」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解して選択しましょう。
居抜き物件のメリットとデメリット
居抜き物件とは、前テナントの内装や設備がそのまま残っている物件です。
専門性の高い業態ではダイニングバーと変わらない価格でサービス提供している店もあるが、基本的には低価格で気軽に飲めることが立ち飲み店に求められていると考えると、できる限り低価格でサービスを提供できるための工夫が必要になってくる。具体的には、有力な食材や飲料のルートを確保し安く仕入れる、居抜き物件を活用して設備投資額を低く抑える、などの工夫である。
専門性の高い業態ではダイニングバーと変わらない価格でサービス提供している店もあるが、基本的には低価格で気軽に飲めることが立ち飲み店に求められていると考えると、できる限り低価格でサービスを提供できるための工夫が必要になってくる。具体的には、有力な食材や飲料のルートを確保し安く仕入れる、居抜き物件を活用して設備投資額を低く抑える、などの工夫である。
メリット:
- 初期投資を抑えられる
- 工事期間が短く早期オープンが可能
- 設備が整っているため、すぐに営業開始できる
デメリット:
- 自分のコンセプトに合わない場合がある
- 設備の老朽化やメンテナンス状態によっては追加費用が発生
- 前テナントのイメージが残りやすい
詳しくはこちら:居抜き物件活用で成功する
スケルトン物件のメリットとデメリット
スケルトン物件とは、以前の借主が退去時に設備等をすべて撤去し、文字通り建物の骨組みだけになっている物件を指します。スケルトン物件では、自由に店舗を作ることができる反面、居抜き物件に比べて内装工事費用は高額になります。
メリット:
- 自分のコンセプトに合わせた内装・設備が実現可能
- 新しい設備を導入できるため故障リスクが低い
- オリジナリティの高い店舗デザインが可能
デメリット:
- 内装工事費用が高額
- 工事期間が長く開業までに時間がかかる
- 給排水・電気工事など専門知識が必要
どちらが望ましいかは、予算や居抜き物件の状態を踏まえた総合的判断になります。
物件探しの方法と情報源
不動産業者の活用法
不動産業者に店舗探しを依頼するときにも、店舗コンセプト、イメージをきちんと示しておけば、適した物件を紹介してもらいやすくなります。
不動産業者を活用する際のポイント:
- 飲食店に特化した不動産業者を選ぶ
- 複数の不動産業者を利用する
- 具体的な条件(予算、広さ、立地など)を明確に伝える
- 居抜き物件を希望する場合は、希望する前テナントの業種も伝える
オンライン情報の活用
最近は専門のWebサイトやアプリで飲食店向けの物件情報を探すこともできます。定期的にチェックして、良い物件があればすぐに行動することが大切です。
現地調査の重要性
気になる物件が見つかったら、必ず現地に足を運んで周辺環境を確認しましょう。特に以下のポイントをチェックします:
- 周辺の競合店の数と業態
- 通行量と客層(平日・休日、時間帯別)
- 周辺施設(駐車場、コンビニ、銀行など)
- アクセスの良さ(駅からの距離、バス停の有無など)
内覧時のチェックポイント
店舗構造と使い勝手
店舗設計にあたって大切なことは、お客さまの視点から入りやすく、歩きやすく、見やすく、分かりやすいレイアウトにすることです。飲食店の場合は、さらにくつろぎやすさが求められます。
内覧時には以下の点をチェックしましょう:
- 客席レイアウトの可能性
- キッチンスペースの広さと動線
- トイレの位置と数
- 換気システムの状態
- 防音・断熱性能
外観と入りやすさ
まず、初めてのお客さまの気持ちになってお店の外観を見てみることをお勧めします。ファサード(店舗外装正面)に開放感はありますか。入口は多く広くしたものを店頭開放型、逆のものを店頭閉鎖型と呼びます。敷地の形状にもよりますが、エントランス(入口廻り)は広くとる方が一般的には入りやすくなります(もちろん、お店の個性を出すために、あえて閉鎖型にする場合もあります)。
そのほか、物理的には、道路面との段差の解消、自動ドアの設置、店名や店頭メニューパネルが読みやすい明るい照明、200cm程度の出入口の鴨居なども、一般的に入りやすさの条件になります。
客席構成と視認性
飲食店のレイアウトを考えるときに、もっとも重要なポイントの一つは客席構成です。人は、本能的に安全で見晴らしがよい場所を選ぶものなのでしょうか。一般にお客さまは、窓際、壁際、両端、奥から順に席をとていく傾向にあります。ですから、外から見える席にお客さまを優先的にご案内することによって、お店の側も賑わいの演出が図れ、同時にお客様のくつろぎやすさも得られるのです。
物件を内覧する際は、客席配置のイメージを持って、窓側や視認性の高い場所にどれだけ席を配置できるかをチェックしましょう。
設備と水回りの状態
飲食店にとって、厨房設備や水回りの状態は非常に重要です。特に以下の点をチェックしましょう:
- 給排水設備の状態
- ガス配管の有無と容量
- 電気容量(200Vに対応しているか)
- グリーストラップの有無と状態
- 排気ダクトの設置状況
居抜き物件の場合は、既存設備の状態もしっかり確認することが大切です。
契約前に確認すべき重要事項
法的制限と許認可
飲食店を開業するには、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」が必要です。物件によっては以下の制限がある場合もあるため事前確認が重要です:
- 用途地域による制限
- 保健所の営業許可取得の可能性
- 防火設備の基準適合
- 排水・排気に関する制限
賃貸条件の確認
賃貸物件を探していると「フリーレント1カ月」といった表記を目にすることがあります。フリーレントは「家賃無料」の意味ですが、住んでいる期間すべての家賃が無料というわけではなく、一定期間(例えば1カ月)が無料になるということです。
賃貸契約を結ぶ際には、以下の点を確認しましょう:
- 賃料と共益費
- 敷金・保証金・礼金の金額と返還条件
- 契約期間と更新条件
- 内装工事の制限
- 営業時間の制限
- 退去時の原状回復義務の範囲
初期費用の試算
初期費用の中でも日割り家賃、前払い家賃は大きな負担。それが軽減されるフリーレント物件は魅力的です。加えて、敷金、礼金、仲介手数料、日割り共益費、前払い共益費、保証料など、そのほかの初期費用の負担が少しでも減らせるフリーレント物件なら、よりお得な引っ越しができるはず。
物件を決める前に以下の初期費用を試算しましょう:
- 契約費用:敷金、礼金、仲介手数料など
- 工事費用:内装、厨房設備、電気・水道・ガス工事など
- 備品購入費:テーブル、椅子、食器、厨房機器など
- その他:看板、メニュー制作、開業前広告費など
立地の弱点をカバーする方法
理想的な立地が見つからない場合でも、工夫次第で成功できる可能性があります。
まず認識すべきことは、立地のよいところは競争が激しいということです。立地の悪いところは、競争こそ激しくありませんが、お客さまが来店しにくいということです。お客さまにきてもらうためにはどうすればよいのか?ということを考える必要があります。
お店の特色を出す(カットがうまいとか)、広告を出す(オープンするお店なので、チラシや地域情報紙でPRする必要があります)、来ていただいたお客さまに満足してもらう(誠意ある接客・サービスなど)、お店の強みをお客さまに共感していただくことで少数の顧客にリピーターとして、家族・お友だちの紹介で顧客を少しずつ拡げていくことが、息の長い集客・安定した経営につながるはずです。
立地の弱点をカバーするための具体的な方法:
- オンライン集客の強化
- 独自性の高いメニュー開発
- ターゲットを絞ったマーケティング
- SNSを活用した情報発信
- 地域との関係構築
まとめ:成功する飲食店物件選びの7つのポイント
- 明確なコンセプトを持つ:何を提供し、誰をターゲットにするかを明確にする
- 立地と商圏を徹底分析:ターゲット顧客の行動パターンを理解し最適な立地を選ぶ
- 予算に合った物件タイプを選ぶ:居抜きか白紙かを予算と目的に応じて選択
- 内覧時は細部までチェック:特に水回りや設備の状態を重点的に確認
- 契約条件を慎重に検討:賃料だけでなく、契約期間や制限事項も確認
- 将来を見据えた選択:開業直後だけでなく、中長期的な視点で物件を評価
- 早めの行動:良い物件はすぐに埋まるため、決断と行動の速さが重要
飲食店の物件選びは、開業後の成功を大きく左右する重要な決断です。本記事で紹介したポイントを参考に、あなたの飲食店コンセプトに最適な物件を見つけてください。慎重かつ戦略的な物件選びが、飲食店開業成功への第一歩となるでしょう。
全体像はこちら:飲食店開業の流れ|失敗しない12のステップ